2018.07.20 Fri

日本で初開催。ポルトガル発祥のクリエイティブコミュニティ『THU Gathering Tokyo』

3DCG、VFX、ゲーム、コンセプトアートの分野において最大級となるポルトガル発祥のクリエイティブコミュニティイベント『THU Gathering Tokyo』(以下、Gathering Tokyo)が6月27日(水)に表参道BA-TSU ART GALLERYで開催された。当日の様子をふり返る。


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images courtesy of Trojan Horse was a Unicorn(THU)



『Trojan Horse was a Unicorn(トロイの木馬はユニコーンだった)』通称『THU』とは、約1週間にわたり開催されるポルトガル発のデジタルアートコミュニティのミートアップイベントである。アーティストによる講演やディスカッションが日夜通して行われ、会場では美味しい料理とともにデジタルクリエイティブ関係者らが出会い・親交を深め『THU』を「体験」する。『THU』では、講演を行うゲストスピーカーはKnight(ナイト)、参加者はTribe(トライブ)と呼ばれるのだが、過去にはクレイグ・マリンズやシド・ミードといった伝説的アーティストがKnightとして講演を行なったこともあるという。


過去に開催された『THU』の様子


そんな『THU』がクリエイティブ分野のアーティストや企業、学生らをつなぐ機会を提供するため、『Gathering Tokyo』として今回日本に初上陸した。過去2回にわたって本場ポルトガルの『THU』にKnightとして参加したという株式会社ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役社長の塩田周三氏(以下、塩田氏)がホストとなり実現した『Gathering Tokyo』。会場にはテレビ/映像/ゲーム/VFX/CG業界などから250名近くのTribeが集い、一夜限りの「THU体験」を味わった。ちなみに、招待状に記載された当日のタイムテーブルは下記のとおりであった。

【18:00】開場
【18:40】Introduction by THU
【19:00】前菜
【19:20】Talk by Doug Chian EP1
【20:20】メインコース
【20:40】Hello, Wendy!(ライブパフォーマンス)
【21:10】デザート
【21:30】Talk by Doug Chian EP2
【22:30】Q&A
【23:10】Meet & Chill
【24:00】Farewell

招待状には「このギャザリングはパッケージとしてお楽しみいただきたく "乾杯18:40 スタート" から最後まで可能なかぎりお付き合いください」と注意書きがされていた。この文言から「THUをちゃんと体験してもらいたい」という主催者のイベントに対する強い思いとホスピタリティを感じる。

受付を済ませて会場に入ると、クラブさながらの大音量で音楽が鳴り響くなか人々はビールを片手に会話を交わし、再開を喜ぶ声と笑い声があちこちから聞こえてきた。また、会場にはおにぎりケータリングユニットごはんとおともによるおにぎりBARが用意されており「ふわっふわのおにぎり」をせっせとふるまっていた。


おにぎりケータリングユニット「ごはんとおとも」による『おにぎりBAR』では、ふわふわのおにぎりがふるまわれた


本イベントを主催する塩田氏と『THU』ファウンダー/CEOのアンドレ・ローレンソ氏のごく簡単な挨拶が済むと、この日のために塩田氏の地元・神戸の蔵元「剣菱」から贈られたという立派な酒樽の鏡開きで『Gathering Tokyo』は景気良く幕をあけた。その後『THU』について紹介するムービーが流れ、過去のイベントの様子や参加者らのコメントに加え、先述したKnightやTribeといったこの空間だけで独自に使われる共通言語などを紹介。この場の楽しみ方や自分がここでどうふる舞うと良いかがわかってきた。


縁起も景気もテンションも高まる鏡開きで『Gathering Tokyo』がスタート


今回のホストを務めた塩田氏


『THU』ファウンダー/CEOのアンドレ・ローレンソ氏



吹き抜けとなった会場の2階で、20年以上に渡り映画『スター・ウォーズ』シリーズの美術ディレクターとして活躍し、ルーカスフィルムではバイスプレジデントを務めたダグ・チャン氏(以下、ダグ氏)による講演がはじまったので移動してみる。この日のKnightとして登壇したダグ氏はまず、幼少期〜インダストリアル・ライト&マジック(以下、ILM)に入るまでの出来事を丁寧にふり返りつつ、少年時代に描いたスケッチをいくつか披露した。


ダグ・チャン氏


講演では、ILMに勤務することになった一部始終、ILMで仕事を始めた当初は技術力がまったく及ばず、仕事が終わったあとにひとりでひたすら練習に励んだこと、ILMに入社してしばらくは絵を描くことを恐れており、キャンソン紙に書いた絵をレイヤーのように組み合わせて背景にコラージュして完成させていた......といった逸話が次々と語られた。ILMに勤務しはじめた当初の自身について「自信がなくてチートをしていたんですよ」とダグ氏は笑い、このことをきっかけに本物の実力を磨かなければと思ったという。

終始にこやかに語るダグ氏の笑顔からは、長年にわたって壮絶な努力と決心を重ねてきた重みが伝わってくるようであった。前半と後半に分けて行われた二時間に渡る講演の中では、数々の失敗談や自己嫌悪に苛まれた出来事についてふれられたが、決して卑屈になることなく常に自分を信じて力強く道を切り開いていくダグ氏の言葉を聞くのは痛快であった。


講演の中ほどでは塩田氏から参加者に向けたQ&Aが行われた。サイコロ型のマイクが次々と渡され、参加者たちから熱心な質問が続いた



再び人々が会話に花を咲かせる会場に戻った筆者は、かつて仕事上で知り合った数名のクリエイターと偶然再会した。仕事を通してでは決して垣間見ることができない彼らの普段の表情やフランクな会話によって、関係性は再構築され次々とあらたな出会いへとつながっていった。このような環境だからこそ、煩雑な手続きを踏まなくとも出会うことができるし親しくなれる。SNSやインターネットを通じたオンライン上の関係ではなく、実際に会って空間を共にするオフラインでのコミュニケーションが与えてくれるこれらの「体験」を提供することが『THU』/『Gathering Tokyo』のミッションなのだ。


シンセサイザー・カルテットHello, Wendy!によるライブパフォーマンスも


美味しい食事とお酒を堪能しながらアーティストたちがクリエイティブの話に花をさかせる


筆者にとってはあくまでも取材(仕事)であり、いつもどおり「客観的に観察しよう」という心がまえで出向いたのだが、本イベントにおいてはそのような傍観者的スタンスはいっさい通用しなかった。立場を忘れて正確に言うならば、会場に集まったTribeたちと『Gathering Tokyo』を存分に楽しませてもらった。
ひとり知り合いを見つけると次から次に新たな出会いにつながり、そこで交わされる会話はどれも非常に刺激的でクリエイティビティにあふれているのだ。これが楽しくないわけがない。会場全体に充満するエネルギッシュかつポジティブな雰囲気もまた、新たな出会いを後押ししている。9月24日(月)〜29日(土)の6日間に渡って行われる2018年の『THU』は、場所をマルタ島に移して開催されるとのこと。一体どのような「体験」が待ち受けているのだろう。チャンスがあればぜひ一度参加してみてほしい。



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