2018.06.27 Wed

ゲーム内容に加えてプレゼンテーションも上々!個性豊かなゲームが並んだ日本ゲーム大賞U18部門予選大会

日本ゲーム大賞2018「U18部門」(主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA))の予選大会が2018年6月3日に都内で開催され、100作品を超えるエントリーの中から一次審査をクリアーしたクリエイター12組が登壇。プレゼンテーション審査の結果、6組が決勝大会進出を勝ち取った。本稿では各タイトルの概要とプレゼンテーションの模様をレポートする。


TEXT&PHOTO_小野憲史


<1>U18部門とは何か?

優れたコンピュータエンターテインメントソフトウェア作品を選考し、表彰する「日本ゲーム大賞。「U18部門」は18歳以下の次世代クリエイター発掘を目的として、今年から新設された部門だ。CESAの人材育成部会で企画・運営され、他の部門と同じく東京ゲームショウ2018会場で発表授与式が行われる。部会長の松原健二氏(セガゲームス)は冒頭、「日本ゲーム大賞は20年以上の歴史があり、昨年の大賞は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』だった。U18部門の参加者の中からも、将来プロのゲーム開発者になり、作品部門で大賞をとる人物が出てくることを期待したい」と挨拶した。

予選大会は審査員による事前試遊プレイ審査とプレゼンテーション審査の合計点で競われた。事前試遊プレイ審査では作品点(遊んで面白いか)、独創性(目新しさ)、構成力(実装上の工夫)、技術点(プログラム、アート、サウンドなどの完成度)。プレゼンテーション審査ではプレゼンの構成・資料の完成度・話しかたなどを評価する形だ。審査員はグリーの下田翔大氏、スマイルブームの徳留和人氏、ディー・エヌ・エーの山口誠氏、サイゲームスの南野真太郎氏。司会進行はスクウェア・エニックスの時田貴司氏が担当するなど、豪華な顔ぶれとなった。

会場の展示コーナーでは予選大会に進出した12作品が展示され、出展者同士が互いのゲームを遊びながら交流する姿もみられた。以下、東京ゲームショウ2018で実施される決勝大会に駒を進めた6組について紹介する。発表授与式は9月23日に行われ、U18部門で初代の受賞者が選出されることになる。

決勝大会に駒を進めた6組


予選大会に出場した12組と審査員・関係者


<2>個性豊かな6作品とプレゼン内容

①THE REALITY/古堅武琉さん(沖縄工業高等専門学校)




ゲームの舞台は多様的汎用AI「Eve」に管理された人工社会「Garden」の中で、人類が人工眼球タイプの有機ELディスプレイ「Reyes」を装着し、現実とは異なる世界を認知して生活するようになった近未来。プレイヤーは特殊遠隔戦闘ユニット「Adam」を操作し、人類を攻撃する謎の生命体「Orisin」に立ち向かっていくというストーリーだ。ゲームを進めていくうちに、プレイヤーは世界の真実に近づいていくことになる。

本作の特徴は上記のように、徹底したSF的世界観へのこだわりだ。ゲームシステムは横スクロールのアクションシューティングで、墨絵のようなモノトーンのグラフィックと、ブラーによって疾走感が演出されたAdamのアクションが特徴的。ヒロインであるEveの自然な揺れアニメーションにも力を入れたという。

何よりも驚かされるのは、この作品を一人で、わずか5日間で作り上げたことだ。制作者の古堅武琉君は「他のエントリー作品をチーム開発していたが、時間が余ったので趣味前回のゲームを作って応募した」と制作動機を明かした。

受賞式でグリーの下田氏は「世界観がしっかりしていた。高校生でこれだけ伝えたいものを持っているという点がすごい」と評価。その一方で「世界観が特殊だからこそ、遊びやすさにも気を配らなければいけない」とアドバイスを送った。これに対して古堅君も「短い製作期間で荒削りなものを、評価していただいたので、そのコンセプトをもとにしっかり作りたいと思っています」と抱負を語っていた。

②なんで僕だけこんな目に/池上颯人さん(横浜市立美しが丘小学校)




小学生で最年少の予選通過者となった池上颯人君。もっとも幼稚園でViscultをさわり、小学1年生でScratchを経て、小学3年生でUnityをスタート。すでに2本のゲームをGooglePlayでリリース済みという、蒼々たる経歴の持ち主だ。学校の新聞係で4コマ漫画を描いた経験から、漫画のおもしろさをゲームでも伝えることが、本作の開発のきっかけになったと語った。

ゲームは坂の上から転がり落ちてくる大玉を、一定の時間だけよけ続けるというものだ。「4コマ漫画が好きな人・ゲームを長時間遊べない人・気軽にゲームを楽しみたい人」に対して、「ストーリーが笑えて、気軽に遊べて、3Dのスピーディな爽快感が味わえる」ゲームを提供することが開発コンセプト。コミカルなタイトルや突飛なキャラクター、丁度良いあんばいの難易度なども、すべてここから導き出されたものだ。若干10歳にしてペルソナやゲーム体験の概念を理解して開発を進めたというわけだ。

スマイルブーム徳留氏の「第2話はどうなるのか?」という質問についても、「誕生会を企画したが、誰も来ないので、自ら探しに行くゲーム」と、さらりと解答。「シュールですね~」という感想を引き出した。また受賞式では「みんなすごい作品ばかりの中で、まさか選ばれるとは思ってなかったです。選ばれたからには、もっとすごいゲームにしていきたいです」と決意を新たにしていた。

③PERVERSE/浅野啓さん(渋谷教育学園渋谷高等学校)、田村来希さん(埼玉県立浦和高等学校)




日本語で「天邪鬼」という意味を持つ本作。その名の通り、ゲームは2体のキャラクターを同時に操作してゴールに到着させるというパズルゲームだ。ただし1体を動かすと、もう1体が同時に逆の動きをする点がミソ。グラフィックは2Dのトップビュー視点で、80年代のパソコンゲームを彷彿とさせる、アスキーアートで描かれたメイン画面が特徴的。そこにはマップ自動作成とマップコードという仕掛けがほどこされている。

本作のフィールドは25マス四方で、壁は「1」、オブジェクトは「2」「3」などの数字で記述されている。この仕様で深さ優先探索(DFS)アルゴリズムを応用し、ゴールから逆算してマップが自動生成される仕組みだ。完成したマップをできるだけ短い文字列で圧縮するために、独自の256進数も自作。数字とアルファベット2文字の組み合わせで圧縮することに成功した。これによりSNSなどでマップを共有することもできるという。

制作者の浅野君は競技プログラミング、パートナーの田村君はセキュリティ競技のCTFでプログラミングに親しんでおり、Twitterを通して知り合った仲だ。そんな二人の発想や思考法に、サイゲームスの南野氏も「どうしたら、こんなに頭が良くなれるのか」と舌を巻いていた。一方で「絵作りがシンプルすぎるので、そこを修正するとよくなる」ともアドバイス。浅野啓君も「UIやゴールがわかりにくかったと思うので、もう少し見た目を改善していきたい」と同意していた。

④『回一首(まわりっしゅ)』/菅野晄さん(早稲田実業学校)




小学生で百人一首が趣味だという菅野晄さん。競技かるたの練習用に百人一首を自動で読み上げるアプリを作ったことで、本作の開発につながった。ゲームはスマホ向けのアクションゲームで、画面の下から百人一首の歌が一文字ずつ、巨大なひらがなが出現して、せりあがっていく。この文字に押しつぶされないように、画面上の自機をうまく左右にフリックしていくという内容だ。

自作アプリをアップルCEOのティム・クック氏にも体験してもらったという菅野さん。各々の短歌を読み上げる声も、自分でしゃべって収録した。本作の凄さはそれだけに留まらない。「百人一首のおもしろさを世界に紹介したい」という意図から英語版を作成し、音声も自分で収録したのだ。ちなみに、登場するフォントはフリー素材をMaya上で加工し、fbx形式でエキスポート。Unity読み込ませて使用している。プロ顔負けの制作プロセスに徳留氏も白旗を揚げていた。

もっとも、そこはプロだけあって、受賞式では「アクションとリアクションの部分にずれがあるので、クリアー後に得るものが少ない印象を受ける」とアドバイス。これに対して菅野さんも「選ばれるとは思っていなかったのですごくうれしいです。決勝大会までにもっとブラッシュアップしていきたいです」と決意を新たにしていた。

⑤モチ上ガール/渡邉大誠さん(徳島市立高等学校)




『ヒトラーの復活』『海原川瀬』などを彷彿とさせるワイヤーアクションゲーム。ただし本作で放つのは鍵縄ではなく「お餅」だ。制作者の渡邉大誠君はプレゼンテーションで「操作が簡単で、自由度が高く、一目で魅力がわかり、良い感触」になるようなゲームを作りたくて、最終的にワイヤーアクションゲームにたどり着いたと説明した。

開発でこだわったのは、遊びやすさの追求だ。自由度やおもしろさを残しつつ、鍵縄の物理動作をディフォルメすることに苦心したという。お餅を伸ばすという奇抜な表現も、視認性を上げて遊びやすくするためだ。当初はロープを発射していたが、より太くてハッキリした表現ということで、お餅という設定になった。空中でのみ餅をのばせるようにしたことで、ジャンプボタンと餅発射ボタンを一つにまとめることもでき、操作性の向上にもつながった。お餅のウェット感を出すために、効果音にもこだわった。

グリーの下田翔大氏は受賞式で「気持ちよさへの、あくなきこだわりが素晴らしい」と賞賛。その一方で「現状のツインスティックによる操作が本当に最適なのか、もう一度原点に戻って考えてみて欲しい」とアドバイスを送った。これに対して渡邉君は嬉しさが止まらない様子。「単純にうれしいので、帰りは寿司とかを食べます。友だちや家族にも自慢したいし、モチベーションも上がってます。モチだけに」と独自の表現で会場の笑いを誘っていた。

⑥RunGirl/(右)原先亮介さん(神戸市立科学技術高等学校、以下同)、(中央)薄井大輔さん、(左)大本義貴さん、(欠席)坂口智哉さん




ゲーム開発はスクラップアンドビルドの連続だ。近年ではイテレーションを回すなどと綺麗な言葉でまとめる傾向にあるが、実際は泥臭い作業の連続で、時にはチーム内の人間関係にまで影響を及ぼすこともある。そうした中、『RunGirl』の制作チーム4名は、都合3回にもわたる作り直しにも挫けることなく、爽快感溢れるランゲームを完成させた。

もともと本作は鳥の声を駆使して敵を誘導し、ゴールに到達するパズル要素の強い3Dステルスゲームだった。しかしメンバー全員が、パズルゲームが苦手とわかり断念。その後アイディアノートの「ランゲー×重力」というメモから3Dランゲームを作り、襲い来る敵を破壊しまくるという内容をめざしたが、シューティング要素が強くなりすぎたために、こちらもボツ。最終的に敵と攻撃の要素をなくし、壁を360度移動できるようにして、現状の形に落ち着いた。

主人公の動作モーションに陸上のウサイン・ボルト選手のフォームを参考にしたり、難解なバグを物理法則の工夫で解決したりと、苦心の跡が目立った本作。ディー・エヌ・エーの山口誠氏は受賞式で「リプレイ性が高く熱中した。ただし初見がわかりにくいので、そこを改善して欲しい」と助言を送った。原先亮介君は「苦労して作ったゲームだったので、本当に選ばれてうれしいです。決勝大会にふさわしいよう、ブラッシュアップしていきたい」と感謝の言葉を述べた。

<3>予選大会の結果から見えてきたもの

1チーム5分のプレゼンテーションはつつがなく終了し、結果発表も含めて時間内に収まるという嬉しい誤算もあった。閉会式では副部会長の斎藤直宏氏(バンダイナムコスタジオ)が登壇し、「100を超えるエントリーから今日まで残ったのは、それだけですごいことなので、決勝大会に進出できなかった皆さんも自信を持ってください。これからも、友だちもどんどん巻き込んで、ものづくりの楽しさを教えていってください。今日はお疲れさまでした!」と挨拶し、会を締めくくった。

なお、惜しくも決勝大会進出を逃した6作品は下記の通り。

『伊邪那岐 ~黄泉がえしの旅~』(雲雀丘学園高校)
『Iridescent』(ヒューマンキャンパス高等学校)
『すすめ!! ほこりくん!!』(バンタンゲームアカデミー高等部東京校)
『パペットキャットと不思議な塔』(神戸市立科学技術高等学校)
『FooDefense 【食べ物を守れ!】』(宮城県工業高等学校)
『MONKEY MILLOR(モンキーミラー)』(神奈川県立川崎工科高等学校)





人材育成部会を中心に二年越しで準備を進めてきたという本コンテスト。松原氏は「想像以上にレベルが高く驚いた」と目を細めた。実際、小学生から高校生まで幅広い作品が決勝大会に進出したことは、関係者の予想を遙かに上回るものだったようだ。プレゼンテーションもみな堂々としており、繰り返し練習した形跡が見受けられた。時間どおりの進行に、司会の時田氏が「ゲーム開発は何かと遅れがちだが、プロも見習いたい」ともらす一幕も見られたほどだ。

その一方で、個人的には決勝大会に進出した6作品のうち、4作品が個人作品だったことに軽い衝撃も受けた。Unityをはじめとした開発環境の普及で、今やゲーム開発のキモがチームマネジメントに移行してきたのだ。特にプロをめざす専門学校や大学生が多くエントリーするアマチュアゲーム部門に比べて、U18部門ではそうした動機付けが乏しいため、チーム開発が迷走しやすい。現状のアマチュアゲーム部門と同様に、来年度からは個人部門と団体部門に分けても良いだろう。


また、U18部門を新設したことで、業界の新たな課題も浮かび上がってきた。若い世代が成長したとき、本当にプロのゲーム開発者になりたいと希望するだけの、魅力ある業界にしていくことだ。U18が業界に就職する頃には、AIをはじめ新たなテクノロジーがゲーム開発に導入されている。そこで求められるのはAmazonやGoogleといった、米5強と渡り合える人材だ。金の卵は見つかった。しかし皆、より広い世界に向けて飛び立っていった・・・。そうならないように、大人の側にも努力が求められそうだ。

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