2016.08.12 Fri

CG映像制作における、エンジニアの価値

3DCGによる映像制作が今ほど容易ではなかった黎明期、アーティスト・エンジニア・研究者は、互いに協力しながら新しい技術や表現方法を模索しており、アーティストも技術に対する一定の知識をもっている必要があった。しかし近年は市販のソフトウェアが洗練され、エンジニアたちとの連携や技術的な知識がなくても、ある程度の映像を制作できるようになってきた。その一方で、CGの技術レベルは年々高まっており、エンジニアの価値が見直されつつある。本記事では、最近の制作現場におけるエンジニアの役割を紹介しよう。

※本記事は、『CGWORLD Entry』vol.13(2015年9月発行号)掲載の「CG映像制作における エンジニアの価値」を再編集したものです。

痴山紘史氏(代表取締役社長)

日本CGサービス(JCGS)

リンクス・デジワークスのエンジニアを経て、2010年に日本CGサービスを設立。日本のCG映像制作における標準パイプラインを構築するため、複数の国内CGプロダクションに対して、コンサルティングやツール提供を行なっている。
jcgs.co.jp/

技術・要求レベルの高度化を受け、高まるエンジニアへの期待

数ある映像作品の中でも、特に3DCGを用いた作品は、アートという側面がある一方で、工業製品という側面も色濃くもっている。出来上がった作品は、それぞれが唯一無二の存在ではあるものの、使われている技術は汎用性が高い。また、長尺作品の場合には、膨大な作業が発生するため、1人の作家の力だけで完成させることは難しい。多くの人員で作業を分担し、協力し合って完成を目指す必要がある。

最先端の研究と、制作現場の距離が近いのもこの分野の特徴だ。北米で毎夏開催されるSIGGRAPHというCGの国際学会では、映画制作などを目的に開発された最新技術に関する論文が頻繁に発表されている。技術力のあるCGプロダクションは、SIGGRAPHで発表された論文内容を実装し、作品制作に活用するといったことを日常的に行なっている。さらに、前述のような経緯で導入した技術に対する制作現場からのフィードバックを基に論文を作成し、新たな成果として翌年のSIGGRAPHで発表するというながれが一般化している。

こういった環境は、エンジニアにとって魅力的だと言える。まったくバックグラウンドの異なる人々が1つの作品をつくり上げるために議論し、時にはゼロから技術を開発し、短いスパンで映像作品という成果を出しつつ、制作システムを構築していくダイナミズムは、他分野ではなかなか経験できない。

ただし、このような環境が日本でも確立しているとは言い難い。近年の日本では、市販のソフトウェアを使った映像制作が主流となっており、制作現場とエンジニア・研究者との距離が遠くなっている。

しかし近年、この状況に変化が生じ、日本でもエンジニアに対する期待が高まりつつある。CG映像に対する技術・要求レベルが高度化し、非エンジニアのみで構成された集団による制作の限界が見えてきたためだ。市販のソフトウェアだけで実現できることは限られている上、市販のソフトウェアを使う場合であっても、十分に性能を発揮させるためには技術的な理解が必要となる。それらをアーティストだけで実践することは難しいため、最先端の技術を使った映像制作というCGの利点を活かしきれなくなっている。

以降では、こういった状況の中で今後の活躍が期待される4つの職業(研究者・エンジン開発者・ソフトウェアエンジニア・システム管理者)を紹介する。これらの技術職・研究職を志す人が増えれば増えるほど、日本のCG映像制作は、さらに面白く、より高度なものになっていくだろう。

最近の制作現場における、エンジニアの役割

▲サイエンスとは科学技術のこと。エンジニアリングとは、科学技術を応用して映像作品(製品)やサービスを生産・提供する技術のことだ。研究者は最もサイエンス寄り、システム管理者は最もエンジニアリング寄りの立場に位置する

Topic01:研究者

特定の分野に深い知識をもち、日々研究開発を行なっている。研究者のなかには、CGプロダクションと共同研究を行い、映像制作に必要な技術基盤を築き、その成果を論文にまとめ、SIGGRAPHなどの学会で発表する人もいる。また、自身の研究成果を下にエンジンを開発し、市販化する場合もある。

Topic02:エンジン開発者

シミュレーションシステムやレンダラなどのエンジンを開発する。研究者やソフトウェアエンジニアと仕事の領域が重なる場合も多々ある。海外の大手CGプロダクションの多くは、自社で開発者を雇用しており、インハウスのエンジンやツールを開発している。特に近年はレンダラを自社開発するケースが増加している。

Topic03:ソフトウェアエンジニア

アーティストとの関わりが最も多い職種だ。既存のソフトウェアやライブラリを組み合わせ、個々の制作現場の事情に合わせたツールを作成したり、CGプロダクション全体でスムーズにデータをやりとりするためのシステム(パイプライン)を構築したりする。テクニカルディレクターの仕事と重なる部分も多い。また、エフェクトアーティストやリギングアーティスト(リガー)といった技術寄りのアーティストに転向する人もいる。

Topic04:システム管理者

社内のネットワークやサーバなどのインフラを支える、縁の下の力もちのような役割だ。アーティストやソフトウェアエンジニアと協力しつつ、システムの観点から制作現場の問題を解決し、パフォーマンスの向上にあたる。CG映像制作で扱う画像の解像度は年々上昇しており、制作工程は複雑化しているため、要求されるシステムのレベルも上昇傾向にある。近年は、大量のデータの格納やレンダリングなどに外部のクラウドサービスを利用するケースもあり、多岐にわたる知識や高度な技術力が求められている。





TEXT_痴山紘史(日本CGサービス)

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