2018.09.06 Thu

スタジオコロリド初の長編アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』〜幻想的な世界を描き出す3DCG制作の舞台裏〜

8月17日(金)より全国公開中の映画『ペンギン・ハイウェイ』。原作者・森見登美彦氏の紡ぐ幻想的で不思議な世界が、スタジオコロリドの手により美しく描き出されている本作。CGI監督を務めた石井規仁氏とデジタル制作・オフライン編集を担当した増田惇人氏に3DCG制作の舞台裏を聞いた。


TEXT_UNIKO(@UNIKO_LITTLE
EDIT_UNIKO、小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota




『ペンギン・ハイウェイ』 8月17日(金)全国ロードショー

監督:石田祐康
制作:スタジオコロリド
製作:「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
配給:東宝映像事業部
penguin-highway.com
©2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会



作画らしい風合いに寄せるための試行錯誤

8月17日(金)に公開となった映画『ペンギン・ハイウェイ』。原作は『四畳半神話大系』、『夜は短し歩けよ乙女』の著者である森見登美彦氏によるもので、森見氏らしい幻想的で不思議な世界観は本作でも健在だ。そんな本作の制作を手がけ、幻想的な世界を描き出したのがスタジオコロリド(以下、コロリド)である。

コロリドにとって初の長編アニメーション作品となった本作のCGI監督を務めた石井規仁氏は、原画の良さを最大限に活かすために「2D(作画)と3Dのベストバランス」を追求したと話す。「本作ではカメラマップを活用したり、3DCGモデルにUVを貼り付けたりと3DCGを活用していますが、作画らしい風合いに寄せるかたちで3DCGを融合させていきました」(石井氏)。とりわけ、本作品で重要な役割を果たす"海"の質感構築は難航し、実制作に入ってからも作画の風合いに近づけるための試行錯誤が何度もくり返され、質感がFIXするまでに半年を要したという。これは、本作の3DCG制作期間のほぼ半分を費やしたことになるそうだ。


写真右から 石井規仁氏(CGI監督)、増田惇人氏(デジタル制作・オフライン編集)


デジタル制作を務めた増田惇人氏は、「制作を開始した当初は、監督(石田祐康氏)からのニュアンスに重点を置いた指示や描き手の視点に立った指示が、特に文章だけの場合などではCGアーティストに伝わりにくい部分があったのですが、チェック時の監督との対話の中で、指示内容や意図を数値などの客観的なものやCG作業者との共通言語に変えて具体的にしていくことでリテイクの数が減っていきました」とふり返り、制作を円滑に進める上でとても重要な過程だったと語る。

その他、群をなして押し寄せるペンギンたちの中に紛れる3DCGのモブペンギン、カメラマップやUVマッピングを融合させて表現した背景美術など、本作では3DCGがバランス良く活用されている。それでは、実際に使用されたシーンの制作工程を確認していこう。

Topic 1:"海"の表現の模索



本作の中盤に登場する "海(うみ)" と呼ばれる宙に浮いた不思議な水の球体。物語をより一層ミステリアスに導くキーとも言える存在だ。本作の3DCG工程はこの"海"の表現手法の模索から始まった。

"海"は基本的にはMayaで制作されているが、作品全体とのマッチングや極力コンセプトアートのイメージに寄せるために、2Dの素材をところどころで使用しAfter Effectsで処理している。光や陰影の表現は3DCGであることが目立ちすぎないよう、セルアニメとのマッチングを追求しつつ、3DCGの機能を活かした制作となったようだ。

質感の模索





"海"のCG処理がFIXする前の検討例(上)。この時点では細かく波が入っていた。制作が進むにつれ質感処理をさらに加えることになり、最終的にはゼリーのようなものが周囲を覆っているかのような見た目に落ち着いた(下)

"海"の作業工程


Mayaのレンダーレイヤー


Mayaから出力した"海"の各素材(※一部視認性を上げるため、色補正をかけています)


After Effectsで各素材を合成

"海"のアニメーション

"海"は表面がさざ波のように波打ったり、表面から水のトゲが飛び出したりと様々な動きを見せる。これらは、アセットとしてねらった動きを表現できるよう、シミュレーションは基本的に使用していない。さざ波のように揺らぐ部分は、プロシージャルだがコントロールの効くものを使って動きをつけている。また、"海"から突き出てくる突起はモーフィング、全体の波の動きはテクスチャアニメーションを使って表現している。






Topic 2:「ペンギン」のキャラクター表現



ある日街中に出現し、物語を動かしていくペンギンたち。終盤でペンギンの大群がアオヤマ君とお姉さんを乗せて街を駆け抜けていくシーン等、ペンギンが群をなして登場するシーンでは、モブとして3DCGのペンギンがところどころに混ざっている。「当初ペンギンを3DCGでつくる予定はなかったのですが、群を成す無数のペンギンたちを全て2Dで描き切るのはやはり困難なので3DCGを融合させてほしい、との要請があり制作することになりました」と石井氏は語る。こちらも"海"と同じく、作画の風合いに寄せるかたちで、ペンギンの群れの遠景などに3DCGペンギンを効果的に配置した。

リグにはHumanIKを使用しているが、「外注スタッフの方にお願いするのであれば、Maya標準のリグを使った方が技術面、機能面としてやりとりがしやすいのかなということでHumanIKを採用しました」と石井氏。また、本作はメインツールがMayaであるため、アウトラインの描画にはPaintEffectsを使用しているとのこと。


ペンギンの作画設定。これらを基にモデリングが進められた


モデリングのチェック用動画



基本のアニメーションのチェック用動画



Topic 3:カメラマップとUnityを活用した背景制作



本作では、カメラマップとUVマップを融合させてつくり上げた「ハイブリッドな背景美術」により、動きのある躍動的なカメラワークを実現した。「特にラストのシーンで多く登場するのですが、角度がつきすぎてカメラマップだけでは表現しきれないシーンは、美術さんに様々な角度から描いてもらった背景を3DモデルにUVマッピングしたものを融合させています」と石井氏。終盤でペンギンが群をなして登場するシーンは、カメラマップとUVマッピングによる「かなりスペシャルなカットのオンパレード」だそうだ。また、どのように美術を描けばいいか美術チームとの折衝が大変だったと石井氏は続ける。「物量の多さに加えカメラマップに使用する際のレイヤー分けや管理、どこからどこまでを美術で描くか、といったやりとりが大変でした」(石井氏)。

また、本作ではUnityを使用したレイアウトが活用されている。一例として、主人公アオヤマ君の部屋は、室内を3DCGモデルに起こしたのちUnityでレイアウトのアタリを出し、それを原図にして美術さんに背景を描いてもらうというながれで進められた。「Unityで出力して演出さんに自由にカメラを置いてもらうという方式を採用しました。作画さんからはパースが取れて大変使いやすかった、と好評でした(笑)」。今後も制作のフローをしっかりと練れば、Unityの使い道にも実用性が出てくるのでは、と石井氏は締めくくった。



Unityでのレイアウトから原図の発注まで

本作でUnityを使用したシーンはアオヤマ君の部屋やカフェ、歯科医院の待合室、教室など。まず背景のアタリとしてモデルを作成し、Unityに読み込んでレイアウト。監督に様々な角度から観てもらい、カメラワークを決定後美術チームに原図の作成を依頼した。机のテクスチャなども貼り込んだ上でUnityで出力し、美術チームにレタッチしてもらったそうだ。


【1】アオヤマ君の部屋の設定画



【2】Mayaでのモデリング




【3】Unityで出力したレイアウト



【4】完成した美術



Mayaでのカメラマップ作業


Maya上で、アオヤマ君の部屋モデルに美術スタッフが作成した原図を貼り込んでいる様子


レンダーレイヤー



設定画面

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