2018.08.03 Fri

NVIDIA、Unreal Engineの最新技術情報と活用事例ー「~レンダリングの未来が見える~ ELSA リアルタイムレンダリングセミナー」

今年3月、エヌビディアより発表されたリアルタイムレイトレーシングレンダリング技術「NVIDIA RTX」。ちょっとしたデモという小手先の結果ではない、映画VFXレベルのリアルタイムレイトレーシングが可能になる一方、それらを実現するには100万円を超えるグラフィックスハードウェアを複数搭載した超ハイエンドのPCが必要であることも合わせて大きな話題を呼んだ。従来膨大なマシンパワーと時間をかけていたレンダリング結果が実時間で手に入るようになると、制作のプロセスも大きく変わってくる。そういった話題をふまえ、6月20日(水)に開催された「~レンダリングの未来が見える~ ELSA リアルタイムレンダリングセミナー」での講演内容をレポートする。


TEXT&PHOTO_安藤幸央(エクサ)/ Yukio Ando(EXA CORPORATION
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada



<1>NVIDIA RTXの技術構成と今後の活用


澤井理紀氏/Sawai Masaki
エヌビディア合同会社・テクニカルマーケティングマネージャー


まず最初に、エヌビディアの澤井理紀氏より、RTX、Optix、AI denoisingといったGPUレンダリングおよびグラフィックスボードの最新技術情報に関する紹介が行われた。


エヌビディアの推定による、1年間のレイトレーシング画像の制作数


現在、世の中ではものすごい量のレイトレーシングが使われていること、その量はゲームにして約400タイトル、映画にして約500本、1,200万件のプロダクトデザイン、CGパースなどの建築用途に15万件ほど活用され、トータルで1年あたり10億枚のレンダリングが行われている。映画『ジュラシック・パーク』(1993)では50ショット程度だったVFXシーンが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)では2,680ショットにまで増大し、フォトリアルなレンダリングのニーズはとても増えてきているという。

レイトレーシングは美しい映像をつくることができるが、とても時間がかかる。その一方、GPUシェーダによるラスタライズ描画ではリアルタイムに描画できるが、表現に限界がある。「そのギャップを埋めるために、映画クオリティのレンダリングをリアルタイムに提供するものとしてつくられたのがNVIDIA RTXテクノロジーです」(澤井氏)。


RTXテクノロジの構成図


NVIDIA RTXは、NVIDIA Voltaアーキテクチャ、Tensorコア、NVIDIA NVLinkという3つの技術に支えられている。Voltaアーキテクチャは、SM(ストリーミングマルチプロセッサ)というレイトレーシングにとても向いたアーキテクチャによって構築されており、これによって命令のキャッシング技術の性能向上、ループ計算の多いレイトレーシング計算において浮動小数点と整数演算を同時に処理できること、メモリのバンド幅の増加などの恩恵を受けている。また、TensorコアによるAI(人工知能)を活用したノイズ除去も成果をもたらしており、さらにGPU同士の接続に高速のNVLinkを使うことで、GPU同士の高度な連携に貢献する。NVLinkのおかげで他のGPUが抱えているメモリの参照も速くなり、実質GPUのメモリサイズが増加したかのように扱えるというメリットもあるという。


AIデノイズ(ノイズを削減する処理)なし(左側)、デノイズあり(右側)の比較画像


NVIDIA RTXレイトレーシングを利用する際は、RTXを直接使うのではなく、グラフィックスAPI経由で活用することになる。それには、NVIDIA OptiXというレイトレーシング用API、または業界団体クロノス・グループが策定しているVulkanというAPIのレイトレーシング用拡張命令、Microsoft DirectX 12のレイトレーシング用API、Microsoft DXRを利用するという3つの方法がある。それぞれのAPIによって、モーションブラーの対応など活用できるRTXの機能が異なるとのこと。


RTXテクノロジのグラフィックスAPIごとの対応表


NVIDIA OptiXでは、マルチGPUにおけるスケーリングが自動的に行われること、AIによるレンダリングの高速化の恩恵を受けることができ、Microsoft DXRでは、DirectX 12ベースのエンジンに容易に統合可能というメリットがある。


SEED - Project PICA PICA - Real-time Raytracing Experiment using DXR (DirectX Raytracing)/エレクトロニック・アーツの研究部門SEEDによる、DXRを用いたデモ映像


また、Arnold、Clarisse、V-Ray GPU、Redshift、RenderMan XPUなど、NVIDIA RTXやレイトレーシングソリューションOptiXを活用する他社製ソリューションが揃ってきている。RTXの浸透により、試行錯誤の時間が短くなりパイプラインの省力化、効率化が期待されると澤井氏は述べた。


映画制作におけるVFXパイプラインと3Dアセット制作において、リアルタイムレイトレーシングによって効率化される箇所


最後に、今後のレンダリングのトレンドは下記の状況にあると紹介。


扱うデータが大きくなってきていること、シーンが複雑化しディスプレイの解像度が大きくなっていること
プリビズの活用が広がってきており、最終的なイメージをすぐに求められている
より高いリアリティ、シミュレーションが求められている
VRの360度映像の作成にコンピューティングパワーが求められている

RTXの活用によって、より効率的に制作が行われるようになることが期待される。最新機器としては NVIDIA Quadro GV100 がVoltaアーキテクチャに対応した機種になるとのことだ。


用途に合わせたコンピュータ構成



<2>ノンゲーム分野におけるUnreal Engineの活用例


杉山 明氏/Akira Sugiyama
Epic Games Japan・Unreal Engineエンタープライズセールスマネージャー


Epic Games Japanの杉山氏からは、Unreal Engineの最新情報ということで数多くの事例が紹介された。同社では約2年前にエンタープライズチームが発足し、ゲーム以外の分野のサポートを開始。工業製品のビジュアライゼーション、建築ビジュアライゼーション、映像制作などのTVシリーズやバーチャルセットなどの分野をエンタープライズと呼んでいるという。こういった分野においてもリアルタイムエンジンのニーズは高まっており、産業用VR・ARにも数多く活用されている。


Enterprise Spring 2018 Sizzle Reel | Unreal Engine/エンタープライズ分野におけるUnreal Engineのデモリール



工業製品ビジュアライゼーション活用事例


McLaren 570S UE4 Cinematic Trailer | Project Spotlight | Unreal Engine/iPadを活用したコンフィギュレーターを利用。車の塗装が複雑なレイヤー構造になっているものを再現できるように工夫されている


McLarenプロジェクトで制作した Automotive Material


Groundbreaking VR tool by Animech/600万ポリゴンの車モデルで、座席に座ってみたり、内装、外装を確認できるVRツール



建築ビジュアライゼーション活用事例

UE4 Architectural Visualization - San Francisco Loft/Monolith Studiosの制作例。建築プレゼンテーションの動画制作に用いられている


Line Creative: Architecture Game (28 Woodland) + Download link/Line Creative制作の、インタラクティブな建築プレゼンテーション。動き回りながら壁紙を変更したりすることができる


また、現在オープンベータ公開中のUnreal Studioは無料でロイヤリティフリーで利用でき、正式リリース後に月額$49のサブスクリプションを開始する予定とのこと。Unreal StudioはUnreal Engineをベースとして、CADソフトなどのデータ変換を行うプラグインDatasmith、動画チュートリアル、サポート、アセットが付属。アセットは今後増えていく予定で、建築用、プロダクトデザインに使えるSubstanceマテリアルを無償で100個提供する。


Datasmithが対応している CADフォーマット


CAD Workflows with Datasmith | Feature Highlight | Unreal Studio


「Datasmithでは階層情報やメタデータも変換されます。現在20種類のフォーマットに対応しており、今後も対応は増やしていく予定です。3ds MaxV-Ray向けに用意したテクスチャやライト、カメラ、形状をそのままUnreal Engine上で変換して利用できます」(杉山氏)。



<3>ドイツ・Mackevisionのコンテンツ制作の考え方


Kian Saemian/キアン・サーミアン氏
Mackevision Medien Design GmbH・Vice President Future Technologies


続いて、ドイツのMackevision Medien Design、Kian Saemian/キアン・サーミアン氏より、「Creating the Digital Future of Realtime Customer Experiences(リアルタイムの顧客体験がデジタルの未来を創造する)」と題して講演が行われた。事情により講演資料は非公開のため、概要のみレポートする。


Mackevision Showreel 2018


Mackevision Medien Designは1994年設立、世界に13の拠点をもち、全世界で600名以上の社員を抱えるCG制作に特化したプロダクションだ。VR分野は現在でも5億ドルの市場規模があるが、そのマーケットサイズは拡大しており、今後もさらに拡大し用途も多岐に渡っていくことが予想される。

また、これらの拡大していく領域はゲーム業界ばかりではない。同社では顧客の「ジャーニーマップ」と呼ばれる体験のながれを明確化し、「タッチポイント」と呼ばれる顧客との接点を見出す。顧客接点としてはまず自動車会社のWebサイトがあり、実際のクルマをショールームで見ること、モバイルアプリケーションでの体験も大切な接点と言える。コンテンツを作成するにあたっては、ブランドのショールームと同じようなレベルのクオリティを提供することが大切なのだという。つまり、クルマのショールーム、Webサイト、モバイルアプリケーションが全てブランドとして同じ雰囲気を保つということだ。


Real-time Solutions by Mackevision


同社は今後、VRを活用した共有スタジオルームでの体験にも力を入れていくという。

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