2018.05.10 Thu

海外のゲームスタジオはデザイナーをどのように募集するのか? 課題サンプルも大公開 〜GDC 2018レポート〜

米サンフランシスコで3月19日から23日まで開催された「GDC 2018」(ゲーム・ディベロッパーズ・カンファレンス 2018)。本稿では、海外のゲームスタジオが求人する際、どのような選考基準を設けているのかを解説した講演「Design Tests and What to Expect from them」の内容を紹介する。

TEXT & PHOTO_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada、UNIKO

AAAスタジオにおける書類選考のサンプルも公開
「Design Tests and What to Expect from them」

プログラマーやアーティストに比べて、スキルがわかりにくいとされるゲームデザイナー。海外の大手スタジオでは就職(転職)に際して、どのような選考基準が設けられているのだろうか? この一端が覗けたのがGDC2018の講演「Design Tests and What to Expect from them」だ。欧米のAAAスタジオにおける書類選考のサンプルが赤裸々に公開される、いかにもGDCらしい講演で、学生向けトラック「ゲームキャリアセミナー」で実施された。

講演者は英Studio GoboでゲームデザイナーをつとめるPeter Buchardt氏だ。デンマーク出身で、大学卒業後にインターンなどを経てPlaydeadに入社。名作インディゲーム『LIMBO』、『INSIDE』の開発にレベルデザイナーとして参加した。2015年からはStudio Goboに移籍し、ディズニーキャラクターが大集合するアクションゲーム『ディズニー・インフィニティ』シリーズの開発に参加。現在はユービーアイソフトの未発表タイトルの開発に携わっている。このようにインディとAAAの両方の開発に詳しい人物だ。

もっとも、そのBuchardt氏にしても、ゲームデザイナーとして仕事を得るために、就職活動でさまざまな辛酸をなめたという。Buchardt氏は実際の課題をベースにつくられたサンプルを見せながら、会場を埋め尽くしたゲーム業界志望の学生に対して、過去の体験談を共有した。なお、本講演はGDC Vaultで動画が無料公開されており、より詳細な講演資料も公開されているので、興味があればぜひチェックしてみて欲しい。

はじめにBuchardt氏は「どこのスタジオでも履歴書やポートフォリオの提出は必須で、そこから面接に進む。ただし、大手スタジオでは応募が非常に多いため、企業ごとに課題選考が行われるのが一般的だ」と説明を始めた。Web経由で応募すると、折り返し書類課題が送られてきて、期間内に解答を作成して送り返す例が一般的だという。内容が及第点だと面接に進めるというわけだ。

ちなみに欧米圏での就職活動は、日本とちがって新卒採用と中途採用が分かれていない点に注意が必要だ。日本では学生は在学中から就職活動をスタートし、5~6月に内々定、10月1日に内定式が行われ、翌年4月1日から出社というのが一般的だ(ただし、中小企業では通年採用も増えている)。

これに対して欧米圏では「今、チームに必要な職種」がピンポイントで募集される例が多く、限られた採用枠にさまざまな経歴のもち主が応募してくる。そのため業界経験に乏しい若手ほど割を食う傾向にある。その最たる例が新卒者だ。そのため学生はインターンシップから業務を開始し、そこで実力を示せば(そして仕事の口があれば)本採用というスタイルが一般的。その際も業務内容と給料がハッキリと規定される。

そのため以下の書類選考も職種に紐付いた、「チームが今、どのようなスキルのもち主が欲しいか」が透けて見える内容になっている。また、一口にゲームデザイナーといっても、さまざまな職種が存在し、それぞれに異なるスキルセットが必要とされることがわかるだろう。

なお、余談ながら会社の必要に応じて雇用されるということは、必要でなくなれば解雇されるという意味でもある(もっとも詳細は国によって異なる)。この点が正社員の解雇規制が厳しい日本と異なる点だ。そのため、日本と海外でどちらが良い・悪いという話ではない点に注意して欲しい。

<1>レベルデザイナー

レベルデザインとはプレイヤーに対して特定の体験や感情を提示することを目的に、一定範囲の空間をデザインする職種のことだ。ステージやマップ単位で仕事が区切られ、エネミーやトラップ、アイテムなどを配置したり、謎や仕掛け(=パズル)、イベントを発案してつくり込んだりする。FPS(一人称視点シューティング)や三人称アクションゲームなどで多く見られる職種だ。そのため空間配置だけでなく、スクリプトのスキルも必要になる。最低限、ゲームエンジンでモックがつくれるスキルが必要になるというわけだ。

課題も「最近どんなゲームを遊んでいるか」、「好きなゲームのレベルと、その理由」といった一般的な内容から、「過去に業務で組んだスクリプトの内容(=この時点で職務経歴がない学生はふるい落とされる)」、「3Dエディターの使用経験」といった業務経歴が問われる。その上で自社のゲームを分析し、その改善案を求めたり、特定の条件下で新しいマップとシナリオをデザインさせたりといった内容になっている(GAME NAMEとあるのは、出題側が規定する任意のゲーム名という意味)。

これに対してBuchardt氏は「Wordファイルにテキストや画像などを盛り込み、解答を作成して提出した」と解説した。スクリプトやレベルデザインでは、実際にゲームエンジン上でモックを組んで提出したという。なお、このときに「デザイン意図が十分に理解できるだけの文量が求められるが、一方でレビューされやすいように簡潔にまとまっている必要もある」と指摘。これは応募者にとってジレンマで、あらゆる職種についても同様だと補足した。

<2>ゲームデザイナー

続いての職種はゲームデザイナー。レベルデザイナーよりも職種の幅が広く、ゲームのアイディアを考え、その内容をもとに仕様書を作成するのが主な仕事だ。課題内容も「AAAタイトルのFPSで新しいグレネード弾のアイディアを提示し、そのアイディアがなぜ優れているのか、そしてそのゴールは何か」を説明。その上で仕様書と各職種向けの発注リストを作成するという内容になっている。入社後の実務を先取りするような内容だ。

ちなみのこの課題では、提出書類の書式は問わない(ただしレビューしやすいこと)としている。これに対してBuchardt氏は「12ページのテキストに8枚の画像と7点の図表を添付して提出した」と語った。また、これ以外にスクリプトのデバッグをしたり、条件に従って新規のスクリプトを作成したりする課題もあったとして、こちらに8ページのテキストを追加したと補足した。

<3>レベル&ミッションデザイナー/スクリプター

こちらはMMORPGやオープンワールドのゲームでイベントを制作する仕事になる。課題もシンプルで、特定のゲームに対して新規のイベントを制作するというもの。ゲーム内の特定ミッション2つの間に挟まる内容で、イベントクリアに20分程度を要し、場所や地形などもある程度指定されている。その上で、そのイベントの内容を説明するのに必要な資料を作成し、その資料をもとにプレゼンテーションを行うという内容だ。

また、この会社では他に応募者の経歴を問うものもあったという。過去に手がけたゲームの中で自信作のミッションかレベルを選び、「選択の理由」と「あと2週間あればどのような改善を行うか」を記すというものだ。他に最近のAAAアクションゲームで応募者が優れていると思うミッションかレベルを3点選び、その理由を簡潔に論述するという課題も含まれている。

Buchardt氏はこの課題に対して、テキスト・画像・図表などで30ページほどの回答を作成し、提出したとコメントした。そしてここでも「本当にそれだけの分量が必要なのか」、「その内容はデザインプロセスをしっかりと反映しているのか」という思いに囚われたという。

<4>RPGデザイナー

続いての課題はRPGデザイナーに応募した際のもの。RPGデザイナーとは聞き慣れない職種だが、課題の内容的にはRPGにつきものの成長ツリーやスキルツリーをデザインする職種だといえるだろう。課題は「SF-RPGにおけるアイテム生成システムをデザインし、UnityのGUIツールでモックをつくれ」というもの。デザインするシステムは1つのジャンルで良いが、50時間のプレイに耐えうるボリュームが求められる。さらに、ボタンをクリックすると実際にアイテム生成が進行するといった具合に、どのような体験が得られるのかがわかるようなモック生成が求められる。

さすがに、ここまで過大な内容が課せられたことは他になかったとのことで、Buchardt氏も「自分に合わないと思ったら潔く撤退するのも手」だとコメントしたほどだ。裏を返せば、ここまでの課題を課さなければ絞り込めないほど、多数の応募が集まるスタジオが存在するということになる(またはピンポイントで、そうした職種が早急に必要だったということかもしれない)。いずれにせよBuchardt氏がこのスタジオで働くことはなかったようだ。

<5>マルチプレイゲームにおけるゲームデザイナー

今や欧米圏の大作ゲームでは必須となったマルチプレイ機能。マルチプレイゲーム専門のゲームデザイナーに関する募集課題のサンプルも紹介された。ここでは特定のゲームに関して、銃の反動やカメラシステムについて考えさせる課題や、異なるスキルをもつ10人のプレイヤーを対象に、バランスの取れた2チームをつくるためのチームマッチング機能、特定のゲームにおける新しい対戦モードなどの提示が求められている。また、新たな銃やガジェット、コンバットスキルなどを考えさせ、なぜそれが優れているのか、どういったパラメータが求められるのかといった課題も見られる。

他にスライドでは紹介されなかったが、シングルプレイヤーモード専門のゲームデザイナー職に関する募集課題も紹介された。こちらでは最近遊んだゲームで優れたゲームシステムをあげ、その理由を論述させたり、反対に駄目なゲームシステムの例をあげ、その改善案を示させたりといった内容が見られる。また、単純にパラメータを増やす以外で、武器を強化する/強化したように感じさせるためのアイディアを述べさせるといった課題もある。詳細は公開されている講演資料を参照して欲しい。

<6>お祈りメールの実例

最後にBuchardt氏は企業からのフィードバック例についても紹介した。もっとも個々の応募書類に対してレビューが行われることはほとんどなく、大半は「お祈りメール」が来て終わりか、逆に面接に進むかの二者択一とのこと。「責任者クラスにレビューさせたが、残念ながら面接に進むことは難しいと判断された」などの定型文が一般的で、中には「アメリカで働くためのビザ提供が難しい」などの理由もあったという。心が折れそうになることもあるが、道を信じて精進して欲しいと締めくくられた。

これまで見てきたように、欧米圏ではゲームデザイナーの職種内容によって応募課題もさまざまだ。しかし、共通しているのは「どのような課題を」、「どのような手段で」解決するのか、具体的なアイディアを出して説明させるという点にある。日本の開発現場においても、参考になる事例が多く含まれているのではないだろうか。

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