2018.02.21 Wed

どこに行けば、キャラクターをつくれますか?No.04>>コナミデジタルエンタテインメント

「キャラクターをつくりたい」という動機から、3DCGやイラストレーションの制作に挑戦し、「これを仕事にしたい」と考えるようになる人は数多くいる。そんな人たちの自己分析と業界研究の足がかりにしてもらうため、本連載では様々なゲーム会社やCGプロダクションを訪問し、キャラクター制作に従事しているアーティストたちの仕事内容やキャリアパスを伺っていく。第4回(※1)となる今回は、コナミデジタルエンタテインメントにおける、キャラクター、ロボット、メカ制作の仕事を紹介する。

※1 本連載のバックナンバーは下記にて公開しております。
No.01(前編)>>フロム・ソフトウェア
No.01(後編)>>フロム・ソフトウェア
No.02(前編)>>コロプラ
No.02(後編)>>コロプラ
No.03>>カプコン

木村峰士氏

プロジェクトマネージャー

多摩美術大学 グラフィックデザイン学科を卒業し、1997年に入社。『METAL GEAR SOLID』(1998)から『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』(2015)にいたるまで、『METAL GEAR』シリーズのメカや背景制作に従事。『METAL GEAR SURVIVE』(2018)ではプロジェクトマネージャーを担っている。

山本典明氏

アーティスト

1997年に東京理科大学 理工学部 機械工学科を卒業。コナミスクールを経て1999年に入社。『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』(2008)まで、『悪魔城ドラキュラ』シリーズのキャラクター、武器、アイコンのドット絵を制作。『Neo Contra』(2004)、『METAL GEAR SOLID V GROUND ZEROES』(2014)、『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』(2015)、『METAL GEAR SURVIVE』(2018)などでは、メカや武器のデザインとモデリングを担当。

株式会社コナミデジタルエンタテインメント

1973年に設立されたコナミホールディングス株式会社(当時のコナミ工業株式会社)のデジタルエンタテインメント事業を2006年に分割して設立。モバイルゲーム、家庭用ゲーム、カードゲームなどの企画・制作・製造および販売を行なっている。現在の本社は東京都港区にある。
www.konami.com/games/corporate/ja/

『METAL GEAR SURVIVE』

2018年2月21日(水)発売の最新作。『METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN』(2015)の高いアクション性をそのままに、サバイバルアクションとして再構築したスピンオフ作品。本記事の後半では、ゲーム内に登場するメカや武器のデザインとモデリングの仕事を紹介する。
www.konami.com/mg/survive/

▲『METAL GEAR SURVIVE』シングルプレイ解説トレイラー。シングルプレイのゲームダイジェストを紹介している
©Konami Digital Entertainment

ゲーム内で動かしたときの見やすさを最優先に、デザインや配色を決定

--まずは木村さん、山本さんの経歴と、現在の仕事内容を教えていただけますか?

木村峰士氏(以降、木村):私は多摩美術大学でグラフィックデザインを学んだ後、新卒として1997年に入社しました。以降、一貫して『METAL GEAR』シリーズのメカや背景制作に従事してきました。最新作の『METAL GEAR SURVIVE』以降はほぼマネジメントに専念しており、つくることは山本をはじめ、ほかの人たちに任せています。メンバーの仕事のサポートをすることが私の仕事です。

山本典明氏(以降、山本):私は東京理科大学で機械工学を学んだ後、当時KONAMIが運営していたコナミスクールで3DCGやゲーム制作を学び、1999年に入社しました。2008年頃までは『悪魔城ドラキュラ』シリーズのキャラクター、武器、アイコンのドット絵を制作し、その一方で『Neo Contra』のメカのデザインとモデリングも担当していました。『METAL GEAR SOLID V』のプロジェクトに配属されてからは、『METAL GEAR』シリーズのメカや武器のデザインとモデリングを担当しています。セットアップも自分でやることが多いですね。ツールはMaya、Softimage、ZBrush、Substance Painter、Photoshopなどを使っています。

木村:山本の得意分野はメカなので、これからお話する内容は「どこに行けば、キャラクターをつくれますか?」という連載の主旨から外れる部分もあると思います。とはいえ山本は「メタルギア サヘラントロプス(以降、サヘラントロプス)」(※2)のモデリングを担当し、「変形させたい!」というアイデアを最初に言いだし、実現させているのです。だから「ロボットをつくりたい」と思っている方には参考になる話が多いと思います。

※2 『METAL GEAR SOLID V』を代表する主役級メカ。大型の直立二足歩行兵器で、REX形態への変形も可能。プラモデルや可動フィギュアも販売されている

--期待しています。機械工学を専攻していたアーティストという経歴は珍しいと思いますが、メカをデザインする上では大きな強みになりそうですね。でも「サヘラントロプス」の話を伺う前に、それ以前に担当した『悪魔城ドラキュラ』シリーズの話を聞かせていただけますか? 過去の仕事から現在の仕事へと、時系列に沿って伺いたいと思います。

山本:『悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架』(2005)、『悪魔城ドラキュラ ギャラリー オブ ラビリンス』(2006)、『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』(2008)では、キャラクター、武器、アイコンのドット絵を担当しました。本シリーズの場合は、最初にドット絵のキャラクターをデザインし、それから詳細なデザイン画やイラストの制作をイラストレーターの方に依頼していました。

--制作の順番はドット絵が先で、イラストは後だったということですか?

山本:そうです。これらはゲームのキャラクターなので、ゲーム内で動かしたときの見やすさを最優先に、デザインや配色を決めています。ドット絵を実際にゲーム内に実装し、動かした場合の視認性を確認しつつ、完成度を上げていきました。

▲『悪魔城ドラキュラ』シリーズの主人公たちのドット絵。左から『悪魔城ドラキュラ 蒼月の十字架』の「来須蒼真」、『悪魔城ドラキュラ ギャラリー オブ ラビリンス』の「ジョナサン・モリス」と「シャーロット・オーリン」、『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』の「シャノア」。どのキャラクターも、ゲーム内での視認性を重視したデザインと配色になっている。例えば「来須蒼真」の場合、当時の携帯ゲーム機の液晶画面が暗かったため、見やすくするために白色が多く使われている。「ジョナサン・モリス」と「シャーロット・オーリン」は画面内に同時に登場し、ペアで戦うため、わかりやすい色分けがなされている
©Konami Digital Entertainment


▲左から「来須蒼真」のデザイン画、「ジョナサン・モリス」のデザイン画、「シャーロット・オーリン」のデザイン画、「シャノア」のデザイン画。先のドット絵を基にデザイン画が制作された(イラストは、『悪魔城ドラキュラ Harmony of Despair』(2010)のもの)
©Konami Digital Entertainment

玩具になることも想定し、パーツ同士が干渉せず稼働できるようにデザイン

--では続いて「サヘラントロプス」の変形を提案するまでの経緯を教えていただけますか?

山本:『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』(2013)のとき、プロジェクトへの途中参加ということもあり、大きなメカは担当しなかったのですが、小さなものでも機構を工夫し、高いクオリティを目指しました。その後『METAL GEAR SOLID V』のプロジェクトへの配属が決まり、「サヘラントロプス」のモデリングを任されたので、あの仕事がチャンスを引き寄せたのだろうと思っています。

--前の仕事の評価が、つぎの仕事に大きく影響するわけですね。

山本:加えて、自分の好きなものを常日頃から明確にしていたことも功を奏したのだと思います。ずっと言い続けていれば、やりたい仕事が巡ってきます。誰しも重要な仕事ほど、それが好きな人、詳しい人に任せたいと考えるものです。

木村:山本はプラモデルも得意で、よくつくっているのです。大学の専攻も機械工学ですから、彼の仕事には「メカ愛」「理工学愛」がにじみ出ています。

山本:プラモデルは子供時代からつくっており、変形ロボットが好きで、よくギミックを考えていました。3DCGを使いはじめてからは、そのギミックを自分でつくれるようになり、ますますメカが好きになりました。「サヘラントロプス」のモデリングを任されたときは嬉しかったですね。1番目立つメカなので、一切手を抜かずがんばりました。

▲【左】『METAL GEAR SOLID V』の「サヘラントロプス」のデザイン画/【右】3DCGの「サヘラントロプス」。当初は左側の直立二足歩行形態のみだったが、山本氏の提案で、右側のREX形態に変形するという設定が追加された
©Konami Digital Entertainment


山本:最初に「サヘラントロプス」のデザインを見たときから、何とかして「メタルギアREX」(※3)に近い形へ変形させたいと思っていました。私自身「メタルギアREX」には思い入れがあったし、同じように考えているファンは多いだろうとも思ったのです。だから当初のデザインはほぼそのままで、REX形態への変形が可能なギミックを考え、それをラフな3Dモデルで再現してみせました。その変形がわりと好評で、無事に採用されたのです。

※3 『METAL GEAR SOLID』(1998)に登場したメカ。

--それはゲームデザインにかなり影響する仕様変更ですね。

山本:『METAL GEAR SOLID V』ではプロジェクトの初期から関われたので、そういう提案でも受け入れられました。細部をつくり込む段階では、プラモデルやフィギュアなどの玩具になることも想定し、パーツ同士が干渉せず稼働できるようにデザインしました。結果として、ゲーム内で3DCGのパーツ同士が埋まることなく変形できるようにもなったのです。この点はプラモデルの経験が役立っていますね。膝のギミックはかなり複雑になったので「金属パーツじゃないと再現できないだろう」と思っていたら、玩具では本当に金属パーツが使われることになり驚きました。

木村:玩具として成立させるための勘どころまでわかっているのは大きな強みです。加えて、言われたことをやるだけでなく「変形させたい」というようなオリジナルのアイデアまで出せる点も素晴らしいと思います。

▲「サヘラントロプス」の変形プロセス。【上段左】【上段右】【下段左】【下段右】の順番で変形する。「直立二足歩行形態の腕さえ何とかできれば変形は可能だと思っていましたが、実際には足の変形に一番苦労しました。『メタルギアREX』の足はいわゆる『逆関節』になっており、変形後のREX形態でも、ぜひこれを再現してほしいと言われたのです。とはいえ素直に再現すると、変形前と同じリグを使えないため、膝を二重関節にすることで解決しました」(山本氏)。「一貫して同じリグを使えるようにしておくと、アニメーターの作業が楽になります。このようにゲーム開発におけるキャラクター制作では、リグを仕込んだときに破綻しないか、アニメーションを付ける際に支障がないかといった点まで考慮する必要があります」(木村氏)
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▲【左】ゲーム内における「サヘラントロプス」
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知識のない人がつくると、一見カッコ良くてもリアリティのないデザインになる

--『METAL GEAR SOLID V』において、山本さんが担当したほかの仕事も教えていただけますか?

木村:『METAL GEAR SOLID V』からは、作中に登場するすべてのメカを自分たちでデザインしています。そのため山本には、戦車、戦闘機などのデザインや、ウォーカーギア(※4)のモデリングも担当してもらいました。オリジナルデザインではあるけれど、実際の兵器と比べても遜色ないリアリティを目指したので、作品舞台である1970∼80年代の軍隊で実際に使われていた兵器を調べ、時代背景にマッチするデザインを考えています。キャラクターの服や小道具をデザインする場合も同様のプロセスを経ています。知識のない人がつくると、一見カッコ良くてもリアリティのないデザインになるので、誰にでも頼める仕事ではありません。

※4 『METAL GEAR SOLID V』に登場する小型の二足歩行兵器。

山本:兵器は工業製品なので、パーツ1つ1つに意味があり、用途があります。生産性のいい製造工程であることも必須です。このパーツはプレス加工でつくるのか、あるいは溶接か、鋳造かといったことも考えながらデザインしています。ボルトで簡単に外せるかどうかといった、整備性のよさも重要です。

--デザインやモデリングの作業自体より、その前段階の調査や設定考証の方により多くの時間がかかっていそうですね。

山本:作業自体も時間がかからないわけではありません。細かいパーツを1つ1つモデリングし、塗装のはげ方、汚れ方まで調べて再現するので、それなりに時間はかかります(笑)。

--1個のメカをつくるのに、どのくらいの時間がかかるのでしょう?

山本:モデルによってかかる時間は全然ちがいます。2週間くらいでつくるものもあれば、1ヶ月以上かかるものもあります。ゲーム内でのあそびに関わる要素があると、そのための確認や調整も必要になります。例えば「長距離ミサイルを撃てるようにしたい」というオーダーがあった場合には、ゲーム内に3Dモデルを実装し、実際に動かして確認し、それを踏まえた修正をするという工程が発生します。

▲ここにある兵器の多くは、山本氏が制作を担当している
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▲山本氏が担当した戦車
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▲【左】山本氏が担当した戦闘機。「航空機の設計手法の1つに『エリアルール』というものがあります。これは『断面積の変化を小さくすると空気抵抗が減る』というルールで、実際の戦闘機の多くがこのルールに基づいて設計されています。ゲーム内に登場する戦闘機も同じように設計することで、リアリティを高めました」(山本氏)。主翼は断面積が大きいため胴体を小さくする、垂直尾翼と水平尾翼の位置をずらすなど、エリアルールに基づいたデザインがなされているという。多くの人はデザインの意図に気付かないが、こういったこだわりの積み重ねがゲームのリアリティを補強している/【右】同じく山本氏が担当した「スネーク専用ウォーカーギア」
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▲ゲーム内における「スネーク専用ウォーカーギア」
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自分でラフな3Dモデルをつくり、実装と確認もした上で、協力会社に発注

--『METAL GEAR SURVIVE』では、どのような仕事をなさったのでしょう?

山本:メカや武器のデザインとモデリングに加え、いくつかの3Dモデルを外部の協力会社に発注しました。以前、別のプロジェクトで外部にモデリングを発注したときには、私の指示に曖昧な部分があったため、思ったものとちがう3Dモデルが上がってきました。その反省を踏まえ、今回はまず自分でラフな3Dモデルをつくり、ゲーム内に実装し、キャラクターを動かしても違和感がないか確認したのです。その上でデザイン画をつくり、先の3Dモデルと一緒に協力会社に送りました。

▲山本氏が制作した「JETハンマー」のデザイン画。ラフな3Dモデルのアウトラインだけをレンダリングし、その上からPhotoshopで描き込んでいる。「実際に機能しそうな機構、リアリティのあるパーツ構成になるよう意識しました。おかげでユニークなものに仕上がったと思います」(山本氏)
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▲先のデザイン画を基に外部の協力会社が制作した3DCGの「JETハンマー」
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木村:デザイン画の段階で、大体できていますね(苦笑)。相当細やかな指示の出し方をしたので、山本の負担は大きかったと思います。でも、おかげで今までにないくらい高い完成度の3Dモデルが上がってきたのです。中には1度でOKを出したものもありました。それ以前は2回くらいのやり直しは当たり前だったので、とても驚きました。

山本:形やサイズ、構造に関しては迷う部分がないようにしたので、協力会社の方々はクオリティアップに集中できたのだと思います。大体できているように見えても、実際にはポリゴンの頂点をゲームに適した位置にしたり、様々なテクスチャをつくったり、シェーダを設定したりと、まだまだやることはあるのです。

--ポリゴン数はラフの段階から変わっているのでしょうか?

山本:ゲームの仕様によります。ほぼ同じ数で仕上げてもらうこともあれば、減らしたり増やしたりすることもあります。

▲山本氏が制作した「転送装置」のデザイン画。「ほかの方にデザインを発注していましたが、まとまりきらなかったので私がデザインを再構成しました。『稼動状態がわかるエネルギーユニットを付ける』『遠くからでも視認できるポール状の灯火を付ける』といったゲームの仕様に合わせたデザインになっています」(山本氏)
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▲先のデザイン画を基に外部の協力会社が制作した3DCGの「転送装置」
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▲ゲーム内における「JETハンマー」と「転送装置」
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木村:ゲーム内に3Dモデルを実装する際、山本は「ゲームとして面白いのか面白くないのか、あるいは気持ち良いのか気持ち良くないのか」という点まで踏み込んでプランナーやディレクターと話ができます。この点も彼の強みだと思います。

山本:「こういうギミックをつくったから、こんなふうにゲーム内で生かしてほしい」「こういう音を付けてほしい」「こういう武器が付いているから、ちゃんと使ってほしい」など、言わないといけない点は多々あります。ただデータを渡すだけでは全部を汲み取ってはもらえないので、実装後に確認し、説明するようにしています。

ユーザーのことまで意識できれば、すべての行動が変わってくる

--最後に、山本さんの今後の抱負を聞かせていただけますか?

山本:ずっと3Dモデルをつくることだけに集中できれば楽しいですが、そうも言っていられません。今後はマネジメントや後輩の育成も担う必要があると感じています。いいゲームをつくるためには、いい開発者といいチームが必要です。そんな思いもあって、最近は新人モデラーの教育もしています。

--何を、どんな順番で教えるのでしょうか?

山本:まずは基本的なツールの使い方、当社なりの使い方などをみっちり教えます。基礎技術がしっかりしていないと先には進めません。ほかにも教えることは多々ありますが、中でも新人にとって一番難しいのはゲームの仕様を理解することのようです。ゲーム開発におけるモデラーの目的は「モデリングすること」ではなく「ゲームをつくること」です。どうやったらゲームが面白くなるか、破綻なく動かせるかまで考え、3Dモデルをつくることが求められます。セットアップのこと、アニメーションのこと、さらにはプレイしてくれるユーザーのことまで意識できれば、取り組み方、スケジュールの切り方、データのつくり方など、すべての行動が変わってくると思います。

▲山本氏(左)と木村氏(右)





TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

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