2017.11.08 Wed

そもそもCGプロダクションとは何なのか?>>仕事の実情から採用基準まで、4社の事例を紹介

月刊『CGWORLD』の別冊付録として、毎年発行されている『CGプロダクション年鑑』をご存じだろうか? 本書は日本国内でデジタルコンテンツ制作に従事するCGプロダクションやゲーム会社を、作品実績と共に紹介している。『CGWORLD 228号』(2017年7月発売号)の付録である最新版には過去最多の390社が掲載されており、 会社の発注リスト、個人の就職・転職先リストとして使えるのはもちろん、学生の業界研究にも活用できる。とはいえ「そもそもCGプロダクションとは何なのか?」という本質的な疑問が解消できていない学生も多いだろう。本記事では、『CGプロダクション年鑑 2017』掲載の4社が登壇した業界志望者・教職員向けイベント「クリ探in名古屋」(2017年9月16日開催)の模様を通して、その仕事の実情や採用基準を紹介する。

ノブタ コウイチ氏(代表取締役)

神央薬品株式会社

CGアニメーションに特化した同社において、プロデューサーとディレクターを兼任している。
www.zinou.jp

山浦正裕氏(取締役)

株式会社ドロイズ

TVのCM、アーティストのライブ映像などの実写合成(VFX)を得意とする同社において、プロデューサーを担っている。
www.drawiz.co.jp

阿部広久氏(管理部 総務課 主任)

株式会社エヌ・デザイン

TVドラマや映画のVFXと、ゲームや遊技機のフルCG映像制作を得意とする同社において、採用を含めた総務全般を担っている。
www.ndesign.co.jp

林 丈二氏(専務取締役)

株式会社スパイス

イベント映像や広告などのCG制作に加え、モーションキャプチャ事業も展開する同社CG部において、ディレクターを担っている。
www.spice-inc.co.jp

ゲーム会社はゲームを制作。アニメ会社はアニメを制作。CGプロダクションの場合は?

「クリ探in名古屋」は、愛知県とその近郊で暮らす業界志望者・教職員に向けて、東京に拠点を置くCGプロダクション4社の仕事の実情や採用基準を伝える目的で開催された。

ゲーム会社であればゲーム、アニメ会社であればアニメ制作が主な仕事だろうと、学生でも容易に想像できる。しかしCGプロダクションの場合、どんなコンテンツを制作しているのか、業界研究半ばの学生が想像することは難しい。ひとくちにCGプロダクションと言っても、得意とするコンテンツ、従業員の総数と構成比などは微妙にちがうため、一言では説明しにくいのが実情だ。

一方で、新人の採用時に重視される素養など、ある程度共通している事柄もある。本イベントで実施された三部構成のパネルディスカッションは、それらを理解するのに最適な内容だった。以降では、その骨子を紹介する。

▲【左】「クリ探in名古屋」のスケジュール。「CGプロダクションのコト」「東京のCG業界で働くコト」「採用されるコト」と題した三部構成のパネルディスカッションが実施された/【右】パネルディスカッションの様子。写真奥の右側から、ノブタ コウイチ氏(神央薬品)、山浦正裕氏(ドロイズ)、阿部広久氏(エヌ・デザイン)、林 丈二氏(スパイス)


最初に4社の仕事内容、従業員の総数と構成比などを順番に解説しよう。

Production01:神央薬品

2012年からCG制作事業を行なっている神央薬品は、CGアニメーション制作に特化している点が大きな特徴だ。従業員24名のうち19名をアニメーターが占めており、モデラーやコンポジターはいない。なお、アニメーターは能力や経験に応じてシニアアニメーター、アニメーター、ジュニアアニメーターの3段階に分かれている。そのほかの従業員は、リギングを担当するリガー、進行管理を担当するプロダクションマネージャー(以降、PM)、自動化のためのツール制作などを担当するテクニカル、プロデューサー兼ディレクターで構成されている。なお、アニメーターの中にはリギングも担当できる人がいるため、リガーが8名程度まで増加するプロジェクトもあるという。従業員の平均年齢は28歳、男女比は2:1、主な使用ツールはMaya、MotionBuilderなどだ。

2015年時点では遊技機(ぱちんこ・パチスロ)用液晶映像の仕事が全体の44%を占めていたが、2017年現在は3%にまで減少している。一方で、2015年時点で10%だったゲームの仕事は、2017年現在66%にまで増加しているという。「ゲームの仕事は、コンシューマ向けタイトルのムービー制作が多くを占めています。当社に限らず、ゲーム内で再生されるムービーの制作を担うCGプロダクションは多いです。一方で、ユーザーの操作に応じてリアルタイムに生成されるインゲーム用のデータは、ゲーム会社内で制作する場合が多いですね」とノブタ コウイチ氏(プロデューサー兼ディレクター)は解説した。遊技機やゲーム以外にも、同社では映画、CM、TV、アニメなど、幅広いジャンルのアニメーション制作を手がけているという。

余談になるが、同社は社名に「薬品」の文字が含まれているため、医療関係の事業を行なっていると誤解される場合もある。実際、ノブタ氏の両親が調剤薬局を営んでいた時代もあったが、2012年に同氏が社名を引き継いだ後はCG制作のみを行なっている。

Production02:ドロイズ

ドロイズは2008年設立のCGプロダクションで、TVのCM、アーティストのライブ映像などの実写合成(VFX)を得意としている。従業員20名のうち14名をアーティストが占めており、VFX・CGスーパーバイザー(5名)とデザイナー(9名)からなる。全員がゼネラリストで、CG制作に加え、コンポジットにも対応できる。そのほかの従業員は、PMとプロデューサーで構成されている。従業員の平均年齢は31歳、男女比は4:1、主な使用ツールは3ds Max、Nuke、After Effectsで、Mayaも一部で使用している。

2017年現在、全体の22%をCMの仕事、同じく22%をイベント映像の仕事が占めている。そのほかにも、企業VP、映画、遊技機、TV、ゲーム、Web動画など、幅広いジャンルのCG制作を手がけているという。「3DCGに加え、After Effectsを使ったモーショングラフィックスも数多く手がけています」と山浦正裕氏(プロデューサー)は解説した。

Production03:エヌ・デザイン

エヌ・デザインは2001年設立のCGプロダクションで、TVドラマや映画のVFXと、ゲームや遊技機のフルCG映像制作を得意としている。従業員39名のうち31名をアーティストが占めており、モデリング、エフェクト、コンポジットなど、何らかの得意分野をもっている人が多い。そのほかの従業員は、ツール制作やシステム管理を担当するエンジニア、PMなどで構成されている。従業員の平均年齢は31.4歳、男女比は2:1、主な使用ツールはMayaとNukeで、3ds Max、After Effects、Houdiniなども適宜使用している。

加えて、フィリピンにDawnPurple.Incという支社があり、20名の従業員が所属している。AlchemyというCGスクールも経営しており、同社に入社した新人は、ここで研修を受けるようになっている。

2017年現在、全体の35%をTVドラマ、22%を映画、同じく22%をフルCG映像の仕事が占めている。そのほかにも、CM、PVなどのCG制作を手がけているという。「CMなどの短尺映像は制作期間が短いので、1人のゼネラリストが全工程を担当する制作体制の方が適しています。反対にTVドラマや映画などの長尺映像は分業による制作体制の方が適しており、当社の強みを生かせると感じています。そのため当社が担う案件は、長尺映像が多くなる傾向にあります」と阿部広久氏(管理部 総務課 主任)は解説した。

Production04:スパイス

1984年に設立されたスパイスは広告代理店の制作事業部を母体としており、現在はグラフィック部、Web部、CG部からなる3部署が制作事業を担っている。従業員数180名のうち20名がCG部に所属しており、イベント映像や広告などのCGを制作している。さらにモーションキャプチャ事業も展開しており、社内に6×13mのモーションキャプチャスタジオを有している。CG部のアーティストはモデラー、アニメーター、コンポジター、ゼネラリストで構成されており、今後はゼネラリストを多く採用する方針だという。加えてPMやディレクターも所属している。CG部の平均年齢は30歳を超えており、男性が多数を占めている。主な使用ツールはMaya、MotionBuilder、Nuke、After Effectsなどだ。

2017年現在、全体の38%をイベント映像、18%を広告、同じく18%をAR・VR、同じく18%を遊技機の仕事が占めている。そのほかにも、ゲーム、CM、Web動画などのCGを制作しているという。「当社は幅広いジャンルのCG制作を手がけており、特にキャラクターアニメーションを得意としているため、最近はキャラクターのライブパフォーマンス映像の案件が増えています。CGプロダクションによって得意ジャンルは様々なので、制作を発注する側も、内容に応じて発注先を変えるのが一般的ですね」と林 丈二氏(ディレクター)は解説した。

その時代の最も成長率の高いジャンルに最大リソースを投入する

先に紹介した4社の仕事内容を見渡すだけでも、CGプロダクションが非常に幅広いジャンルを手がけていることが理解できるだろう。さらに、以下で紹介するグラフも見てほしい。これらは『CGWORLD 228号』(2017年7月発売号)の第2特集「CGWORLD白書 2017」にて実施したアンケート調査の一部だ。これによると「現在、最も多く手がけているジャンル」はゲーム(36.0%)、「ここ1年で特に案件が増えたと感じるジャンル」はAR・VR(26.3%)、「ここ1年で特に案件が減少したと感じるジャンル」はアミューズメント(※1)(55.7%)が最多となっている。

※1 遊技機の別称

▲『CGWORLD 228号』(2017年7月発売号)の第2特集「CGWORLD白書 2017」にて実施したアンケート調査(※2)の一部。CGプロダクションが多岐にわたる仕事を手がけていることに加え、際立って案件が増加しているジャンルもあれば、減少しているジャンルもあることが理解できる

※2 調査方法:Webアンケート/調査期間:2017年5月29日∼6月12日/調査対象:CG・映像業界にお勤めの方/回答者数:106名


遊技機案件が減少したというアンケート結果は、神央薬品のノブタ氏が語った同社の状況と一致している。一方で、現在はAR・VR案件の増加が際立っているが、この傾向が今後も続くとは限らない。どんなジャンルであろうと、景気が良ければ案件は増加し、景気が後退すれば案件は減少する。そのため単一ジャンルの案件だけを受注しているCGプロダクションは、そのジャンルの景気が後退すれば経営の危機にさらされる。それを避けるためには、常に複数ジャンルの案件を受注しておくのが望ましい。「できるだけ色々なジャンルを手がけ、その時代の最も成長率の高いジャンルに最大リソースを投入するのが理想的です。この方針はアーティスト個人にとってもメリットがあります。仕事を通して様々な取引先のノウハウを吸収できるため、飽きることがありません」と林氏は解説した。

終わろうと思えば、いつでも終われる。その結果が、他人からの評価になる

以降では、各社の採用基準について語られたパネルディスカッションの模様をお届けする。


ノブタ コウイチ氏(以降、ノブタ):新人を採用する場合、即戦力は求めていません。「2∼3年後に1人前になれる人かどうか?」という基準で判断しています。当社は主にMayaとMotionBuilderを使っていますが、それらの使用経験がなかったとしても、ちゃんとアニメーションをつくれてさえいれば採用します。ツールの使い方は入社後に教えますから、まったく問題ありません。

山浦正裕氏(以降、山浦):当社も学生時代の使用ツールにはこだわりません。一方で、写真撮影を経験している人の方が望ましくはありますね。当社は実写映像にCGを合成する案件を数多く手がけているため、カメラのレンズの仕組み、現実の光や色などに関する知識がないと、自然な画づくりができませんし、周囲の人との話も噛み合いません。

阿部広久氏(以降、阿部):当社もツールにはこだわりません。ただ、パソコンの扱いやデータ管理に慣れている人だと嬉しいですね。

林 丈二氏(以降、林):ツールに関しては当社も同様です。指導係がついて、あまり負荷をかけすぎないよう調整しつつ、順番に教えていきます。とはいえ、一から十まで教えるわけにもいかないので、調べる手間を惜しまない人、つくることに貪欲な人でないと長続きしません。

ノブタ:貪欲さは大切ですね。先ほど「ちゃんとアニメーションをつくれてさえいれば」と言いましたが、基本的な「歩き」のアニメーションですら実はすごく難しくて、ちゃんとつくれている学生作品はほとんど見たことがありません。でも、たとえ未熟であろうと、貪欲に難しいことに挑戦している人には期待したくなります。反対に、学校の課題しかやっておらず、自分からは何のチャレンジもしていない人のデモリールには魅力を感じません。そういう人は、入社した後も何のチャレンジもしないだろうと思ってしまいます。

:当社の選考でも、課題しか入っていないポートフォリオやデモリールだと、よほど突出したレベルでない限り落とされます。日本全国には数多くの専門学校や大学があり、そこでは毎年、膨大な数の学生が学んでいます。「課題をポートフォリオに入れる」という選択は、一番安易で、多くの学生がやっていることなのです。Aさんも、Bさんも、Cさんも同じような課題では、誰も選べません。そういう状況の中で、どうすれば周囲と差別化できるか、効果的なプレゼンテーションを考えた方がいいと思います。「これでどうだ!」と言えるような、つくりきった作品を1個でもいいから入れるよう心がけてほしいです。

阿部:当社ではCGやVFXの経験がない学生であっても、高い画力があれば採用しています。そういうライバルを相手に、自分の武器になり得るものは何かを見極め、ポートフォリオに詰め込んでいただきたいです。

山浦:私自身が学生のポートフォリオを見る機会は少ないですが、よく見ているスーパーバイザーたちの意見を聞いていると「引っかかりがあるもの」「その人のやりたいことが見えるもの」を送ってくる学生は目に留まるようです。

ノブタ:「こういうことがやりたくて、この業界に入るんです!」というビジョンが明確な学生は、入社後もちゃんと成長します。ビジョンがなく、常に楽な方を選択していると、成長しないし、良い映像もできません。この仕事は常に「自分との戦い」なので、「これで完成だ」と思ったら、いつでも終わらせることができてしまいます。

:そうですね。終わろうと思えば、いつでも終われます。その結果が、他人からの評価になります。

ノブタ:自分たちが「ちょっと気になるな......」と思う部分は、「そこ甘くない?」と、高い確率でクライアントからも指摘されます(苦笑)。逆に「これ以外にない!」というレベルまでがんばったものは、たいていOKが出ますね。

:どこの会社もそうだと思いますが、「うちはこのクオリティの画をつくる」という会社としての基準があります。「この人に任せ続けても、その基準に達しない」と判断した場合は、別の人に変えることだってあります。

ノブタ:当社も変えますね。本人のためにもならないし、会社としてのクオリティを守ることが最優先ですから。

山浦:「業界に入ること」がゴールになっている人は、そういう局面でねばりきれず、長続きしない場合が多いですね。「つくり続けないと死んじゃう」というような強い気持ちをもっている人ほど、挫折を乗り越えられますし、プラス思考で生きていけます。

ノブタ:最近入社してくれた新人たちは、お互いに意地を張り合って、ねばりにねばって遅くまで帰ろうとしませんでした。その意欲は嬉しかったのですが「流石に言って聞かせて帰らせた方がいい」という話になりました(笑)。我々が新人だった時代とはちがい、今の新人にはハードなねばりを要求しませんが、失敗や挫折をしたら、なぜできなかったのかを考えて、1ミリでもいいから行動を変える姿勢でいてほしいとは思います。

阿部:確かにパーソナルなゴールが明確な人は強いですね。「当社を踏み台にして海外に行きます」というくらい、強い主張でもいいのです。もちろん長く一緒に働いてくれれば大歓迎ですが(笑)。面接で「将来、どうなりたいですか?」と聞いたとき、ほとんどの学生は明確な返答ができません。せいぜい「人から頼られるようになりたい」と答える程度で、具体性に欠ける場合が多いです。履歴書の志望動機も、どこかからコピーしてきたような具体性に欠ける内容だと印象に残りません。自分の言葉で、自分の素直な気持ちを書いてもらうのがいいと思います。

:最近はポートフォリオならPDF、デモリールならVimeoやYouTubeなどの動画投稿サイトにアップロードしてもらう求人が増えており、デジタル化が進んでいます。履歴書の文字もパソコンで打ってもらっても全然構いませんが、「自分は手で書く方が好き」という方は手書きにすればいいと思います。手で描くことも、自分の個性を伝える手段のひとつになります。

山浦:どんなやり方でもいいので、自分の気持ちをどんどん出していくことが大事だと思います。今日この会場に来てくださった方々は、「ここに来る」というアクションを通して、この仕事に対する興味や思いを見せてくださいました。この後も、そういうアクションを積み重ねてほしいと願っています。

:学生時代も、就職した後も、目の前の問題をひとつずつ解決し、コツコツと努力し続ける人は、いずれドーンと開花して、周囲から評価されるようになります。開花のタイミングは人それぞれなので、諦めずに努力を続けてほしいと思います。

阿部:デザインすることが好き、表現することが好きという人は、この仕事に向いています。長ければ40年、50年と同じ仕事を続けていくので、好きなこと、楽しいことを選択した方がいいと思います。実際、私はすごく楽しいです。

ノブタ:皆さんがよく名前を聞くような監督やアーティストは、たいていすごい努力をしています。データを送ったら、時間を問わず直ぐ返事が返ってきて、「いつ休んでるんだろう?」と思うことだってあります。自分が前へ進む努力をして、その努力が結果につながり、自分がちゃんと報われるような生き方をしてもらえれば、人生がさらに楽しくなると思います。この業界で、皆さんと一緒に仕事ができる日を心待ちにしています。

▲パネルディスカッション終了後の個別面談では、4社の登壇者全員にポートフォリオやデモリールを見せ、評価を受ける熱心な参加者もいた





TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

記事が気に入ったらシェアしよう!

New Post最新の記事はこちら

Ranking今週の人気記事

Findキーフレーズから探す

Top