2017.10.18 Wed

DeNAが伝えたいゲームグラフィックス&プランニングの仕事>>「面白さ」を考え、伝えきる

ゲームの仕事に興味はあれど「ポートフォリオにどんな作品を入れれば良いかわからない」「自分の企画書の書き方や内容に自信がない」といった悩みを抱える学生は多い。そんな悩みを解決する糸口を提供すべく、株式会社ディー・エヌ・エー(以降、DeNA)は2017年8∼9月にかけて、ゲームグラフィックスゲームプランニングのサマーインターンシップを実施した。本記事では、これらを主導した同社の大山晃央氏(デザイナー)と山口 誠氏(プロデューサー)へのインタビューを通して、ゲームグラフィックス、並びにゲームプランニングの仕事の本質と、それを理解する方法を紐解いていく。

大山晃央氏(デザイナー)

ゲーム・エンターテインメント事業本部に所属。コンシューマゲーム会社からDeNAに中途入社。ゲームグラフィックスのサマーインターンシップにおいて、2015年の第1回以降、継続して企画や実施に携わっている。

山口 誠氏(プロデューサー)

ゲーム・エンターテインメント事業本部に所属。コンシューマゲーム会社からDeNAに中途入社。ゲームプランニングのサマーインターンシップにおいて、2016年の第1回ではメンターの1人を担当。第2回となる今年は主導役となり、企画や実施を牽引した。

dena.com/jp/

3日間で、ゲーム開発の面白い部分、本質に近い部分を凝縮して体験

CGWORLD(以降、C):サマーインターンシップの実施、お疲れ様でした。どちらのコースの参加者も、最終日の発表回では充実した制作物を披露しており、たったの3日間で非常に密度の濃い体験をしていることに驚きました。

大山 晃央氏(以降、大山):私も毎年驚かされます。今年の参加者もすごく頑張ってくれました。3日間という非常に短い時間ですが、本来の仕事の1%程度のボリュームでも良いから、面白い部分、本質に近い部分を凝縮して体験できるようにしたいというのが、われわれのサマーインターンシップの方針です。その体験を通して、ゲーム開発自体が、自分に合っているかどうかも見極めてほしいと願っています。

山口 誠氏(以降、山口):事前選考を経て、今年はゲームグラフィックスコースは18名、ゲームプランニングコースは16名の学生に参加いただきました。どちらも大学生・大学院生が多数派でしたが、専門学校生もいましたね。大山が語ったように、サマーインターンシップはゲーム開発と自分との相性を確認してもらうことが目的だったので、ゲーム業界に進むかどうか決めかねている人や、職種が定まっていない人もいました。

大山:ゲームグラフィックスコースの場合は、基礎画力のある人、面白さを考える力のある人に来ていただきました。実際の採用とはちがい、ゲーム開発への熱量はそれほど重視していません。学生のポートフォリオの中には、絵が描きたいことは伝わるけれど、ゲームグラフィックスに対する理解は浅そうな印象のものが数多くあります。そのためサマーインターンシップでは「ゲームグラフィックスはゲームの面白さを引き出すためにある」のだと理解してもらうことを主な目的としました。

山口:ゲームプランニングコースではゲーム開発への熱量を重視する一方で、志望職種は問いませんでした。プランナー志望以外の人にも企画の楽しさを知ってもらいたかったので、デザイナー志望、エンジニア志望、どの職種にするか迷っている人などにも門戸を広げて選考しました。プランナーは、デザイナーやエンジニア以上に仕事内容が世の中に知られていないので、「そもそも、どんな役割を担っているのか?」を伝えることを目的のひとつにしているためです。

それから学生の企画書の中には、ゲームシステムを偏重し、その土台となるべきコンセプトやユーザーエクスペリエンス(以降、UX)がおざなりになっているため、そのゲームの面白さが伝わらないものが数多くあります。「システムではなく、コンセプトとUXを基点に企画を考える姿勢」も、サマーインターンシップで伝えたい要素のひとつに据えました。

▲インタビュー当日の山口氏(左)と大山氏(右)。このインタビューは、サマーインターンシップの全日程終了後、DeNA社内にて行われた

ロジカルに積み上げていくデザイナーの仕事+アーティストならではのアイデアの飛躍

C:ここからは当日のスライドや制作物を拝見しつつ、お話を伺いたいと思います。まずはゲームグラフィックスコースについて、ふり返っていただけますか?

大山:ゲームグラフィックスコースは、3名ずつの6チームに分かれ、最終制作物としてゲーム画面をデザインしました。とはいえ、いきなりゲーム制作に挑戦するのはハードルが高いので、まずは既存のクラシックなゲームをプレイして、そのゲームを構成しているグラフィックスのアセットを書き出し、それらがどのように面白さ、気持ち良さに寄与しているのかを分析してもらいました。

▲ゲームグラフィックスコースのサマーインターンシップの様子(写真提供:DeNA)


▲ゲームグラフィックスコースで使用したスライド。グラフィックス自体の魅力に加え、ゲーム上での機能も考慮して、ゲーム画面をデザインすることが求められた


C:ゲーム画面のグラフィックスをつくることはもちろん、そのゲームの面白さや、操作する際の気持ち良さを考えることまで要求なさっている点に驚きました。これらは本来、プランナーの仕事ではないでしょうか?

大山:社内でも「プランナーの領域に踏み込みすぎでは?」との声はありました。ですが実際のゲーム開発でも、リードデザイナーはゲームデザインにも深く関わっています。それに、遊んだときの面白さ、気持ち良さまで考慮するのがゲームグラフィックスデザインの特徴であり、醍醐味だと思っています。

山口:プランナーの視点から見ても、ビジュアルと、コンセプトやUIとを関連付けて考えられる素養があるデザイナーはとても重要で、ゲームの品質を大きく左右します。

大山:各チームが制作するゲームのターゲットとして「架空の小学4年生男子」をわれわれの方で設定し、このターゲットに訴求するビジュアルテーマを考えてもらいました。ジャンルは「横スクロールアクション」とし、ストーリー、世界観、ゲーム仕様、プレイヤーキャラクターのアクションもわれわれが提示しました。

C:プレイヤーキャラクターのアクション以外は全チーム共通だったのにも関わらず、ひとつとして似通ったデザインがなかった点にも驚きました。

大山:「ほかのチームに負けたくない」という対抗心がどのチームにもあったようで、一生懸命にクオリティを上げてくれました。途中の個人面談で意識して発破をかけるようにしたのも功を奏したようです。例えば面談で「クオリティが低いので、このままではいけないと思う」と語ってくれた人には、「そう思っているなら遠慮せずチームメンバーに意見を言い、全員でクオリティアップに努められるよう働きかけてほしい」と伝えました。

C:会ってから1∼2日しか経っていない人を相手に「遠慮するな」と言われても、そう簡単にはいかないでしょうね。

山口:実際のゲーム開発でも起こり得る事態ですが、プロであれ学生であれ、思ったからには「発言する」という責任から目をそらさないでほしいのです。「いざこざが起きてでも、アウトプットが良くなる」のと、「いざこざは起きないけれど、アウトプットが良くないままで終わる」のと、どちらを望むのかと問えば、たいていの人は前者を選択してくれます。クリエイターを自負する人であれば、誰しもクオリティを上げたいですから。

大山:ゲームグラフィックスの制作において、ゲーム上での機能を考慮することは必須ですが、それに徹するだけでは印象に残るビジュアルになりません。プレイヤーの感情を揺さぶるビジュアルをつくるためには、ロジカルに積み上げていくデザイナーの仕事と、アーティストならではのアイデアの飛躍の両方が必要とされます。制作物を講評する際には、その点にも配慮しました。

▲『回る』というプレイヤーキャラクターのアクションを提示されたチームの制作風景。「最初のネタ出しの段階では、チームメンバー全員が自分の好きなビジュアルを提案しており、『回る』というアクションや、ターゲットである小学4年生男子と結び付いていませんでした。でも『チェーンソーが回ることで攻撃するロボット』というアイデアが出た後は、それに合う世界観がどんどん肉付けされていきました」(大山氏)(写真提供:DeNA)


▲最終日の発表会用につくられたスライドの数々。「必須課題はゲーム画面のデザイン画1点だったのですが、どのチームもそれ以上の数のビジュアルをつくってくれました」(大山氏)。【左】プレイヤーキャラクターのデザイン画/【右】ゲーム画面のデザイン画。「かっこいい」「派手め」というビジュアルテーマに基づいて制作されている


▲【左】敵キャラクターのデザイン画/【右】ボスのデザイン画。「このボスはやや異色のデザインなので、講評会の席では『世界観に合っていないのでは?』と語るメンターもいました。でも私は『このくらい突拍子もないデザインの方が、プレイヤーの感情を揺さぶり、記憶に残るかもしれない』と語りました。このボスが出てきたら、プレイヤーは『倒して良いのかな?もしかして、悪いのはプレイヤーの方なんじゃないの?』と思うかもしれません。『このお腹をチェーンソーで切って良いの?』と躊躇するかもしれない。そんな風に、色々な考えを抱かせるデザインの方が、心にグッときますよね。ビジュアル制作は『ミスマッチだから駄目』と一概に言えるものではなく、様々な見方があることを知ってほしいと思ったので、先のような講評をしました」(大山氏)


▲『落とす』というプレイヤーキャラクターのアクションを提示されたチームの発表会用スライド。【左】プレイヤーキャラクターのデザイン画。「初期のデザイン画は自分たちの好きな既存ゲームのキャラクターの影響を色濃く受けており、『雷を落とす』というゲームのコンセプトに対する必然性が低くなっていました。メンターの指摘を受け、ゲームのコアの部分とビジュアルを結び付けられた後は、制作に勢いが出てきました」(大山氏)/【右】ゲーム画面のデザイン画。「かっこいい」「激しい」というビジュアルテーマに基づいて制作されている。「1日目の時点では『画面内に複数の避雷針を設置して雷を落とす』という、パズルゲームのような複雑なシステムを考えていました。でも2日目の後半に『雷をタイミングよく落とす』というシンプルなゲームシステムへと方針を変更し、『落とす』という縦方向の遊びに適したゲーム画面がデザインされました」(大山氏)

自分の企画を深掘りできるねばり強さ+「これじゃない」と理解したときに捨てられる潔さ

C:続いて、ゲームプランニングコースについてふり返っていきたいと思います。

山口:ゲームプランニングコースは、チームではなく個人での制作に取り組んでもらいました。自分をターゲットとするゲームを考え、まずはペラ1枚(A4用紙1枚)の企画書を書き、段階的に完成度を上げていくという課題を設定しました。3日目の午後には、完成した企画書を使って全員の前でプレゼンテーションをしてもらい、「ゲームの面白さが伝わるかどうか」をメンターや私、学生たち自身が審査しました。

C:ゲームグラフィックスコースとはターゲットからしてちがいますね。どうして「自分」をターゲットにしたのでしょう?

山口:面接で学生と話をすると、その多くは「ゲームが好きです!」と語ってくれます。でも、それだけならただのプレイヤーです。クリエイターを目指す第一歩として「なぜゲームが好きなのか?」「なぜゲームをつくりたいのか?」という問いに対する答えを、確固たる考えをもって言えるようになってほしいと思ったのです。そのためサマーインターンシップの1日目には、「なぜゲームをつくりたいのか?」というテーマから連想していくマインドマップも書いてもらいました。

C:まずは「自分」というプレイヤーを徹底的に分析し、「自分」を納得させるゲームをつくることを課したわけですね。

山口:「自分がゲームで表現したいもの」つまりは「クリエイターとしての『エゴ』」は、最も創作活動に必要な感情の源泉です。それを自覚してもらうことも、このサマーインターンシップの目的のひとつでした。

▲ゲームプランニングコースのサマーインターンシップの様子(写真提供:DeNA)


▲ゲームプランニングコースで使用したスライド。プランナーの仕事は、「面白さ」すなわち「感情の動き」を考え、つくり、伝えること。「感情の動き」をプレイヤーに提供する手段が「体験」すなわち「UX」であることが解説された


▲【左】今回のサマーインターンシップでは、「コンセプト」「UX」を基点として、「世界観」「システム」「ルール」「操作」までを考え、伝えることが課された/【右】3日目のプレゼンテーションでは、「コンセプト」「UX」「システムを含めた要素」の一貫性が審査基準とされた


山口:学生の中には、どこかで見たことがあるゲームの一部を切り貼りした「ゲームっぽい」企画書をつくる人が多くいます。そういう人は、1度立ち止まって「そのゲームを自分はやりたいと思うのか?」「お金を出してでも手に入れたいと思うのか?」を問うてほしいのです。そういう思いから、「まずは自分が『絶対に面白い!』と思うゲームを考える」「その上で、その面白さが人に伝わる企画書をつくる」という、今回のゲームプランニングコースにおけるカリキュラムのながれが形成されました。

C:3日目の審査で1位に選ばれた『PAIR TANK』と2位の『メテオダイブ』の企画書は、1日目のペラ1枚から3日目の最終形まで、「自分が表現したいもの」がぶれていない点が印象的ですね。どちらもシステムは途中でガラリと変わっていますが、コンセプトとUXはさほど変わっていないように見えます。

山口:この2人は最初から「自分が表現したいもの」が明確だったので、それを綺麗に伝えきる企画へと段階的に洗練させることができたのだと思います。コンセプト・UX・システム間の不一致を途中でメンターから指摘されたとき、それまで考えてきたシステムを潔く捨て、あくまでUXを中心に据え、新しいシステムへと変更できた点は特に素晴らしかったですね。

C:自分の企画を深掘りできるねばり強さと、「これじゃない」と理解したときに捨てられる潔さの両方を合わせもっていたわけですね。

大山:プランナー、デザイナーを問わず、その姿勢はすごく重要です。

山口:逆にシステムを基点に考えてしまった参加者の企画は、どこかで見たことのある既存のゲームに似てしまい、何が面白いのか伝わらないケースが多かったですね。別の誰かがつくった面白いゲームのシステムをコピーしただけでは、自分も、ほかのプレイヤーも納得させることはできません。彼らは彼らで、そういう自分の現状を理解し、サマーインターンシップを総括する面談で「今回は悔しかった」と語ってくれたので、将来は良いプランナーになるだろうと期待しています。

▲1位に選ばれた『PAIR TANK』の1日目後半時点の企画書【左】と、2日目後半時点の企画書【右】。「声をかけ合う協力プレイ」というコンセプト、「現実でプレイする2人も盛り上がる体験」というUXは一貫している。一方でシステムは、プレイヤー2名が背中合わせに銃や大砲を撃つものから、1台の戦車を操作するものへと大きく変化している。「『背中合わせに銃や大砲を撃つだけなら、それぞれが別個にプレイするゲームでも成立するから、声をかけ合う必要がないのでは?』というメンターの指摘を受け、ガラリとシステムを変えてくれました」(山口氏)


▲3日目のプレゼンテーション用に清書された、全33枚からなる企画書の一部


▲2位に選ばれた『メテオダイブ』の1日目後半時点の企画書【左】と、2日目後半時点の企画書【右】。「『忍者になって壁を走りたい』というUXは一貫していましたが、1日目の時点ではシステムにパズルゲームの要素が入っており、UXが『パズルを解く達成感』へと変質していたのです。それをメンターから指摘され、パズルゲームの要素を捨てたのに加え、よりスピード感や高低差が感じられるUXになるよう、プラットフォームをスマホからNintendo Switchへと変更してくれました」(山口氏)


▲3日目のプレゼンテーション用に清書された、全12枚からなる企画書の一部。「この参加者は美術大学の学生だったので、絵でゲームの面白さを伝えられるという強みがありました。とはいえ絵が描けることはプランナーの必須要素ではなく、既存の画像や映像を組み合わせて伝えるのでも全く構いません。そのため、学生のうちからゲーム以外の表現にも親しみ、アウトプットのための引き出しを増やしていく習慣を身に付けてほしいと思います」(山口氏)

サマーインターンシップの価値は、その場で得られた体験と感情にある

C:どちらのコースも、参加者はものすごく頭を使い、極めて濃い体験をしたようですね。

大山:そうであってほしいと願っています。実施する側も、毎回すごく考えてやっていますから。

山口:このサマーインターンシップの価値は、デザイン画や企画書などの制作物ではなく、その場で得られた体験と感情にあると思っています。満足感だったり、失敗した悔しさだったりを通して、ゲーム開発の仕事の面白さ、楽しさを知ってもらえたなら、すごく嬉しいです。今後も、デザイナーやプランナーの仕事の価値を伝えるインターンシップを継続していきたいと考えているので、興味のある人はぜひ応募してほしいと願っています。

C:この度は貴重な情報や画像を開示いただき、有難うございました。






TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

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