2017.08.09 Wed

ゼロから特訓!ビジュアルデベロップメントNo.09>>Visual Development : Animation Film in USA

こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。今回は、連載 第5回第6回第7回で学んだ透視図法(Perspective)を使い、様々な視点(POV/Point of View)からのサムネイルを描きます。同時に、視点とストーリーテリングの関係性も学びましょう。

伊藤頼子氏(ビジュアルデベロップメントアーティスト)

三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。2017年以降は拠点をロサンゼルスに移し、現在はアートディレクターとしてアニメーション長編映画を制作中。
www.yorikoito.com

3つ以上のサムネイルを描き、最適なレイアウトデザインを選択する

ショットのアイデアを練り、レイアウトデザインを決めるときには、3つ以上の全く異なるサムネイルを描いてみましょう。その際、つぎの注意事項を守るようにしてください。

ストーリー展開に沿った画を描く
3つの透視図法を使い分け、全く異なる視点(POV/Point of View)やアングルで描いてみる
全く異なる画面構成で描いてみる
画の中の焦点(Focal Point)をはっきりさせる
パース線(消失点へと収束する線)を基に、まずは簡単なラフを描く

複数のサムネイルが描けたら、その中から、ショットのストーリーを伝えるのに最適なレイアウトデザインを選択しましょう。

Lesson13:室内で会話する2人を描く

室内で会話する2人を、3つ以上の全く異なるサムネイルで表現してみましょう。

▲室内における人物の配置を決めた後、カメラをどこに置くと良いショットになるか検討します。以降では、上の1〜3にカメラを置いた場合のサムネイルを描きます


▲一点透視図法を使い、会話する男女を対等に描いています。上では、2人の頭上にある球形の電灯と、2人の頭部を結んだピラミッド(三角形)が画の中の焦点となっています


▲どちらも一点透視図法で描かれています。【左】は男性の視点で描かれており、女性の顔が画の中の焦点となっています。【右】は女性の視点で描かれており、男性の顔が画の中の焦点となっています

Lesson14:野外の大きな建物と、そこを訪れた人物を描く

野外の大きな建物と、そこを訪れた人物を、3つ以上の全く異なるサムネイルで表現してみましょう。このようなショットは、エスタブリッシングショット(※1)の役割も果たします。

※1 英語ではEstablishing Shotと表記する。登場人物を、周囲の環境と一緒に1つの画面に収めるショットのこと。登場人物が置かれた状況や、周囲との位置関係を観客に伝えることができるため、シーンの冒頭で多く使われる。

▲どちらも三点透視図法で描かれています。【左】は馬上の男性の視点から建物を見上げているため、建物の高さが強調されています。【右】は画面内の全てを見下ろす視点(※2)で描かれているため、シーン全体が見渡せます。人物の小ささが、建物の大きさを強調しています

※2 このような視点は、鳥の視点(Bird Point of View)と呼ばれる。


▲【左】二点透視図法を使い、建物と男性が横からの視点で描かれています。【右】一点透視図法を使い、男性の後方からの視点で描かれています。どちらも広範囲を見渡せるため、観客はシーンの状況を把握できます


▲画面構成を決めるときには、まず大きな形でとらえると良いでしょう。個々の形のサイズのちがいに注意し、バランスの良い配分になるよう配慮しましょう


▲画面を見る人の、視線の動きについても解説します。過去の連載でも書いたように、透視図法の消失点に向かって収束する線は、見る人の視線を自然と誘導するツールになります。人物の顔(特に正面から映した顔や目)と頭部も、見る人の視線を集めます。また、画面内の人物の視線も、見る人の視線を誘導するツールとなります。上の4つの作例の場合、画面内には2人の人物が描かれています。見る人の視線は、まず馬上の大きく描かれた人物へと誘導され、その人物の視線を通して、建物内の小さく描かれた人物へと誘導されます。そのため、建物と小さく描かれた人物(作例内の赤丸)が、最終的な画の中の焦点となります


サムネイルの制作時には、前述の注意事項で述べたように、まず簡単なラフを描き、色々な表現を試してみると良いでしょう。つぎの4点は、Lesson14のサムネイルを描き込む前のラフです。

▲Lesson14のサムネイルのラフ


「これが1番良い」と思い込み、1枚だけを描くのではなく、複数の全く異なるサムネイルを描いてみることが大切です。まずは時間をかけず、小さいサイズで、大まかな形を捉えたラフを描きましょう。頭の中だけで考えるのではなく、実際にラフを描いて比較することで、より目的に合ったレイアウトデザインを選択できるようになります。


今回のレッスンは以上です。第10回も、ぜひお付き合いください。
(第10回の公開は、2017年9月を予定しております)





TEXT&ART WORK_伊藤頼子
EDIT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田充

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