2017.03.10 Fri

ダンデライオンアニメーションスタジオLLCが見据える、アニメCGの可能性

手描きと3DCGを融合したセルルックに加え、デジタル作画による2D、フル3DCGなど、多彩なアニメーション表現に日々挑戦しているダンデライオンアニメーションスタジオLLC。同社の代表と、脇を固める熟練スタッフたちに、アニメCG制作の可能性を伺った。

※本記事は、『CGWORLD Entry』vol.12(2015年6月発行号)掲載の「ダンデライオンのスタッフが語る フル3D、セルルック、2D......アニメCGの広がる可能性」を再編集したものです。

西川和宏氏(代表)

ダンデライオンアニメーションスタジオLLC

VSL(ビジュアルサイエンス研究所)、東映アニメーションなどでCGアニメーターやCGディレクターを務めた後、2007年に同社を設立。多数の劇場作品、シリーズ作品のプロデュースやディレクションを行う。

山崎拓哉氏(Look/コンポジットユニットリーダー)

ダンデライオンアニメーションスタジオLLC

様々な作品における背景/アニメーションリードを経て、2007年の設立時から同社に参加。コンセプトボードアーティストとしても活躍し、現在は日中共同製作による新作アニメ―ション『ROBOMASTERS THE ANIMATED SERIES』のCGディレクターを務める。

田村和弘氏(アニメーションユニットリーダー)

ダンデライオンアニメーションスタジオLLC

2008年に同社に参加。テレビ作品、劇場作品のアニメーション作業のリード/CGディレクターを務める。CGディレクターとして参加する『おはようコケッコーさん』が、「テレビ東京・あにてれ きんだーてれび」にて放映中。

西谷浩人氏(モデル/テクニカルユニットリーダー)

ダンデライオンアニメーションスタジオLLC

1995年からCGデザイナーとして活動を開始。2007年より同社に参加。開発、セットアップ、システム全体を統括しながら、自身も複数案件のアセット管理を行う。

ダンデライオンアニメーションスタジオLLC

アニメーション作品の企画立案・元請け制作をはじめ、監督・シナリオ・キャラクターデザイン・コンセプトデザインから作品の完成にいたるまで、アニメーション制作の全てを行なっている。2014年からは2Dデジタル作画・美術ユニットも発足し、さらに表現の幅を広げている。設立10周年を迎える今年は、日中共同製作による新作アニメ―ション『ROBOMASTERS THE ANIMATED SERIES』の制作を発表。海外展開にも精力的に取り組んでいる。同社では現在、新戦力を求人中だ。
www.dlas.jp/
cgworld.jp/jobs/10151.html

アニメのレイアウト制作に3DCGを活用

ダンデライオンアニメーションスタジオLLCの代表を務める西川和宏氏は、90年代後半から3DCGアニメーション制作に携わっている。「TVアニメシリーズでの3DCGの役割は、徐々に幅広く、奥深くなってきましたね。かつては背景に少し使われる程度でしたが、自然現象などのエフェクトでも使われ始め、メカも3DCGになり、最近ではキャラクターにまで拡張しています」(西川氏)。加えて、原画や動画、背景美術といった手描きスタッフの作業を助けるために、レイアウトと呼ばれる参考画像をつくる仕事も増えているという。「TVアニメの場合は予算に限りがあるので、3DCGを使うカットは全体の1~2割という場合が多いです」(西川氏)。


▲劇場版総集編 前編『ハイキュー!! "終わりと始まり"』予告


▲TVアニメ『ハイキュー!!』の絵コンテ【左】/タイムシート【右】


▲TVアニメ『ハイキュー!!』の3DCGでつくったレイアウト【左】/手描きの作画【右】


▲TVアニメ『ハイキュー!!』(2014)の完成画。絵コンテとタイムシートを参照しながら、3DCGでレイアウトを制作。これを参考に、作画や背景美術がつくられ、完成画ができあがる。3DCGを使えば、カメラの設定、CGモデルの配置などを柔軟に変更できるため、レイアウトの試行錯誤をやりやすいというメリットがある。最近のTVアニメ制作では、このような3DCGの活用が増えていると、本作のCGディレクターを務めた田村氏は語る
©古舘春一/集英社・「ハイキュー! ! 」製作委員会・MBS

手描きアニメを模倣し、3DCGでモブ(群衆)を制作

多くの場合、TVアニメの3DCGは伝統的な手描きアニメを模倣している。例えばアニメーションには、リミテッド(※)と呼ばれる日本独自のタイミングが適用される。レンダリング時には、輪郭線や単一色による陰影を適用し、セル画のような見た目を再現する。

※ リミテッドアニメーションに関しては、CGWORLD Entry.jpの記事『もっとアニメらしく!>>ゲーム&アニメのセルルック3D最新事情』で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてほしい。


▲『百日紅~MissHOKUSAI~』新予告60秒


▲映画『百日紅』では、西川氏がCGプロデューサーを務めた。本作では、主にモブ(群衆)制作で3DCGを活用しており、多くのモブが登場するカットやカメラが動くカットは、作業量が多くなりがちで苦労したという。「手描きのように見せることにこだわり、形状、陰影、輪郭線の出方、動きなど、それぞれに細かい工夫をしています」(西川氏)
©2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

国内のトレンドだけに固執せず、墨絵のような表現にも挑戦

しかし、前述のような手描きの技の再現だけに留まっているのはもったいないと西川氏は感じているそうだ。「計算による現象のシミュレーションがコンピュータの得意分野です。そのため、人の感性や技(わざ)をダイレクトに表現する手描きアニメのような手法とは相性が良くない部分もあります」(西川氏)。だからこそ、セルルック以外のアニメーション表現にも積極的に挑戦していきたいと、ディレクターの山崎拓哉氏は語る。「例えば映画やスマホのアプリ向けコンテンツであれば、セルルック以外の表現も可能です。特に海外のマーケットを相手にしていると、日本以上に多彩なルックが受け入れられる可能性を感じますね」(山崎氏)。今後は、日本国内のトレンドだけに固執するのではなく、海外の幅広い価値観も視野に入れたものづくりをする必要があると西川氏は補足する。


▲スマホ向けゲームアプリ『Angry Birds Fight!』のムービー


▲スマホ向けゲームアプリ『ANGRY BIRDS FIGHT!』のムービーでは、一般的なアニメでは用いない、墨絵のようなユニークな処理を適用している。「墨と筆で描いたような輪郭線の大部分は、ベクトルデータを用いて自動生成しています。一部は手で描く必要がありましたが、その作業も面白かったですね」(山崎氏)
©2009-2015 Rovio Entertainment Ltd. All righs reserved.

表現の方法は様々。実写と3DCGを組み合わせたオリジナル作品も制作

同社で3DCGアニメーションディレクターを務める田村和弘氏も、この意見に賛同している。「今はセルルックとそれ以外を1:1の割合で手がけています。それぞれに魅力があり、解決すべき課題があります。社内にはデジタル作画のスタッフもいて、彼らから学べることも多いです」(田村氏)。同社には手描きアニメの作画監督や原画を経験してきたデジタル作画スタッフが所属しており、3DCGアニメーションのレイアウトや、動きのチェックを担う場合もあるという。


▲ダンデライオンアニメーションスタジオLLCのオリジナル作品『LITTLE WONDERS』


▲同社のオリジナル作品『LittleWonders』は、ハウススタジオで撮影した実写背景と、3DCGキャラクターを組み合わせて制作した。「背景の制作(撮影)が1日 で終わる......というフル3DCGではありえないダイナミックな感覚を味わえました。その反面、後からの変更は不可能なため、計画的で丁寧な仕事が必要でした」(西川氏)。本作では、西川氏が監督・脚本、西谷氏がCGセットアップ、田村氏がCGアニメーターを務めている
©DandeLion Animation Studio, LLC.


一方で、アニメや映像への興味が薄くても、仕事の内容や、そこで働く人に興味があれば、この仕事は楽しいし、やりがいも感じられると山崎氏は語る。「この業界には、おもしろい人たちが山ほどいます。そのなかで働けることが嬉しくて、私はこの仕事を続けています」(山崎氏)。「目の前の問題を解決して、周囲の人に感謝さ れる。そういう経験をしたい人で、テクニカルの素養のある人がいれば、ぜひこの業界に入ってほしいです。テクニカル系の人材は慢性的に不足していますから、きっと歓迎されるでしょう」と、テクニカルスーパーバイザーの西谷浩人氏は語る。現在、西谷氏は複数のプロジェクトをかけもちしつつ、機械的な作業の自動化・効率化に尽力しているという。

「ひとくちにアニメCGといっても、表現の方法は様々ですし、仕事の内容も様々です。自分なりの確固たる美意識をもって、"私はこういう仕事がしたい"といえる方と一緒に、アニメCGの未来を探りたいですね」(西川氏)。





TEXT_尾形美幸(CGWORLD)

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