2016.12.14 Wed

業界初!BISHAMON/Unity/UE4によるゲームエフェクトコンテスト開催>>エフェクトのすそ野を広げたい

ゲームエフェクトツール『BISHAMON』を展開するマッチロックが主催する『第6回ゲームエフェクトコンテスト』。これまでBISHAMONユーザーを対象に行われてきたが、今回はじめてUnityUnreal Engine(UE)4ユーザーにも門戸が開かれることになった。ゲームエフェクトのコンテストは世界的にも珍しく、その中でもツール横断型のコンテストとなると、本邦初の開催となる。どのような思いで開催が決定されたのか、各ツールベンダーの仕掛け人に思いのたけを語ってもらった。

後藤 誠氏(BISHAMONエバンジェリスト)

マッチロック株式会社

スクウェア・エニックス、シリコンスタジオを経て現職。エフェクトツールとエフェクトの魅力を広く知らしめるため、本コンテストの実施をはじめ、様々な活動を行なっている。
www.matchlock.co.jp

稲葉剛士氏(代表取締役)

株式会社アグニ・フレア

大手ゲーム会社でエフェクトデザイナーを務め、2010年に起業。日本のエフェクト技術の底上げと、エフェクトデザイナーが幸せになることを目標に、様々なゲーム開発プロジェクトに携わる。本コンテストも立ち上げから協力。
agni-flare.com

池和田 有輔氏(Unityエバンジェリスト)

ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社

フリーランスとしてWeb制作・広告制作のキャリアを積んだ後、2013年からステルスアドベンチャーゲーム『République』開発に参加。その後ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンに就職し、現職。
unity3d.com/jp

ロブ グレイ氏(ディベロッパーリレーション・テクニカルアーティスト)

エピック・ゲームズ・ジャパン

スクウェア・エニックスなどを経て現職。UE4のテクニカルサポートやカンファレスでの技術講演などを務める傍ら、テクニカルアーティストとして活躍中。
epicgamesjapan.com

参加の間口を広げるために対象ツールを拡大

--今回で第6回目となるゲームエフェクトコンテストですが、どのような経緯で始まったのですか?

後藤誠 氏(以降、後藤):初めて本コンテストが開催されたのは2008年のことで、対象ツールはBISHAMONの前身となる『BlendMagic』でした。その後、諸事情で休止していましたが、2012年に開催したエフェクトセミナーをきっかけに復活したんです。稲葉さんからも復活を提案いただきましたし、「さらなるエフェクトデザイナーの育成と、日本のゲーム開発を支援したい」という自分の思いもありました。翌年、会社や学校を回っていく中で、業界関係者や専門学校の先生方から「コンテストを続けてほしい」という声をたくさんいただき、それ以降は毎年開催しています。

稲葉剛士氏(以降、稲葉):エフェクトデザイナーは大手でも数が少なく、人の入れ替わりも激しいため、なかなか技術やノウハウが蓄積されませんでした。自分も様々な現場でこの問題を感じていて、次第に「自分たちでエフェクトデザイナーを育てていくしかない」という結論に達しました。そのきっかけとして、コンテストをやりたいと後藤さんに相談したんです。

▲ゲームエフェクトツール『BISHAMON』。タイムライン上でエフェクトアニメーションを編集できるなど、ゲームエフェクトの制作に特化している


--過去5回の開催で状況に変化はありましたか?

後藤:確かな手応えを感じています。今年のゲーム開発者会議『CEDEC 2016』で、終了後の懇親会に出席したところ、ある若手が「学生だったころ、ゲームエフェクトコンテストがきっかけでエフェクトに目覚めて、エフェクトデザイナーになりました」と話しかけてくれたんです。感動して涙が出そうになりました。

稲葉:当社でも去年と今年で1名ずつ、新人エフェクトデザイナーを採用しました。いずれもゲームエフェクトコンテストの経験者です。こんな風に少しずつ、学生の間でエフェクトデザイナーの認知が広がってきたのが嬉しいですね。私が学生だった頃は、ほとんど知られていませんでしたから。


▲第5回ゲームエフェクトコンテスト全作品


▲第5回ゲームエフェクトコンテスト結果発表会


--今回は、BISHAMONだけでなくUnityとUE4にまで対象ツールが広がりました。

後藤:「もっと間口を広げて参加者数を増やすには、どうしたらいいだろう」と、稲葉さんと相談していたんですよ。「だったら、ツールを増やすしかないね」という結論にいたりました。「エフェクトデザイナーを育成する」という見地に立ち、BISHAMONだけではなく、ツールの枠を超えたコンテストを目指そうと考えたのです。そこで「無料で使用でき、アマチュアからプロまで多くの人に使われているUnityさん、UE4さんと一緒にできたらいいよね」という話になりました。

池和田 有輔氏(以降、池和田):実は我々でもゲームエフェクトコンテストを開催するアイデアがあったんです。先日発表された『Unity 5.5』では、Unity上でエフェクトを制作するツール『SHURIKEN』の機能が大きく強化されました。その後「せっかくだから一緒にできたらいいよね」という話になったんです。

▲Unity5.5で大きく強化された点のひとつがエフェクトだ。パーティクルシステム『Shuriken』を使用して、さまざまなエフェクトをつくり出せる。Unityの強みであるアセットストアを使用すれば、様々なアセットを活用した作品づくりも可能だ


ロブ グレイ氏(以降、ロブ):後藤さんから当社の方に打診があり、二つ返事で決まりました。今の仕事では、エフェクトに関するサポートはよくやりますが、実は昔はエフェクトづくりがとても苦手でした。

▲大量のパーティクルを自在に扱えるUE4のエフェクト制作。パーティクルエディタ『カスケード』を使った、直感的な制作が可能。ブループリントでロジックを組み、エフェクト調整用の専用UIをつくることもできる


ーーそうなんですか?

ロブ:昔はマシンパワーが低く、良いツールもなかったため、綺麗なエフェクトをつくるのがすごく面倒臭かったんです。パラメータをちょっといじって、レンダリングに何時間もかけて、表示させて、またちょっとパラメータをいじって......。それが今では本当に直感的に、リアルタイムにつくれるようになりました。そのため、今このタイミングでコンテストを実施するのは、とても良いアイデアだと思います。


▲第5回最優秀賞(一般部門)『幸運のおまじない』/作者:chi
テクニカル部門への応募作品で、9種類のテクスチャとBISHAMONの機能のみで制作された点が高く評価された。一見すると立体的なポリゴンモデルが使用されている印象だが、すべてビルボード(板ポリゴン)でつくられている

エフェクトにはCG制作の基本が詰まっている

ーーエフェクトの魅力はどんなところにありますか?

池和田:プレイヤーのゲーム体験をより鮮明にしてくれる、まさに『ゲームの華』だと思っています。オーラや魔法効果などが典型例ですが、特に日本のゲームでは『実際に存在しない』エフェクトが多数登場するじゃないですか。ああいったビジュアル表現がないと、ゲーム体験の質がぐっと下がってしまうのは明らかだと思うんです。

ロブ:そこはアメリカ人の自分から見ても、面白いところなんですよね。欧米のゲームでエフェクトと言えば、火花や銃口のマズルフラッシュなど、現実に存在するエフェクトが一般的です。専任のエフェクトデザイナーもたくさんいます。一方で日本のゲームはもっとエフェクトの種類が多く、幻想的なものがたくさんあるのに、エフェクトデザイナーが少なくて......。

池和田:『ビリーバビリティ』という言葉が象徴的ですが、海外の方は現実世界に即した表現を好まれますよね。一方で日本では現実からはみ出た表現でも追求していきます。それはまさに想像力の産物であり、クリエイティブ・ワークそのものだと思うんですよ。

後藤:文化的にみても、日本は海外で一般的な一神教ではなく、多神教の文化が生き残っていますよね。どこにでも神様が宿っていて、人知の枠を越えた何かが感じられるというか......。オーラ的な表現というのは、まさに好例だと思うんですよ。


▲第5回最優秀賞(学生部門)『First_Aid』/作者:てまて(HAL大阪)
RPGの回復魔法をモチーフに制作されたエフェクトで、イメージキャラクターのフレアちゃんが使用されている。動きのメリハリが良く、テンポも心地良い作品だ


--稲葉さんはエフェクトデザイナーとして、どのような点に気をつけてつくられていますか?

稲葉:良いエフェクトは自分が見て『気持ちが良い』と感じられるものだと思っています。他人が見ても気持ちが良いものをつくるには、まず自分が気持ち良くなるものをつくる必要がありますよね。そのためには『タメ・ツメ』を意識することが重要です。学生さんが陥りやすい欠点として、エフェクトの動きが直線的になりがちな点が挙げられます。ここを意識するだけで、ぐっと作品のクオリティが上がりますよ。

--その話はモーション制作にも相通じるところがありますね。

稲葉:そうなんです。というより、エフェクトはモーションの一部なんですよ。エフェクトには『ポリゴンモデル』『テクスチャ』『アニメーション』『ライティング』など、CG制作に必要な全ての要素がバランス良く入っています。すべての要素が調和することで、良い作品になるんです。


▲第4回最優秀賞(一般部門)『愛のブレイブリー!』/作者:成田成人
エフェクト作品というより、映画の1シーンを彷彿とさせるような内容で、ストーリー性とドラマ性が盛り込まれており、思わず画面に引き込まれてしまう

エフェクトの無限の可能性を追求してほしい

ーー応募作品の傾向などはありますか?

後藤NCC新潟コンピュータ専門学校HAL大阪をはじめ、ゲーム系の専門学校でエフェクトの授業が取り入れられるようになり、過去5年間で学生の応募作品のレベルが急上昇しました。一般の方でも作成に際して絵コンテを描いたり、カメラワークをつけたりと、どんどん凝ったものが出てきていますね。

稲葉:回を重ねる毎に「ひとつの作品をつくろう」という意識が高まってきたように思います。毎回ストリーミング番組で中間発表をやっているのですが、今回はツールの枠が広がるので、どんな作品が登場するか、今から楽しみです。UE4は大量のパーティクルを簡単に操れますし、Unityはライブラリが充実しています。BISHAMONは唯一の国産ツールで、日本人が考えるエフェクトと親和性が高い。こんな風に各々のツールに特徴があるので、上手く活用するのもひとつの手です。


▲第4回最優秀賞(学生部門)『愛の情熱爆発!』/作者:りんか閣下(HAL大阪)
地球をはじめとした8つの惑星が1つに融合し、愛の象徴であるハートマークに変化する。動きにメリハリがあり、十数秒のアニメーションの中にも起承転結が感じられる


--それでは最後に応募者にメッセージをお願いします。

池和田:皆さんのクリエイティビティを発揮してほしいですね。優れたエフェクトは何かしらストーリーを感じさせます。ストーリーがあることで、画面には表示されていない何かが浮き上がってくることがあります。黒い背景の前で炎が燃え上がっているだけなのに、その背後に何かが見え隠れするような......。そんなパンチの効いた作品が見たいですね。

ロブ:エフェクトに限らず、日本のUE4ユーザーの中からは、すごく変わった、とんでもないものがよく出てくるんですよ。「こんな風にUE4を使うの?」と驚かせるような、我々の予想をはるかに越えたものです。そんな風にツールの制限に立ち向かって、新しい使い方を見せてくれる作品を、本コンテストでも期待しています。我々がこれまで発表したエフェクト コンテンツのサンプルも公式サイトからダウンロードできますので、ぜひ参考にしてください。

稲葉:「エフェクトコンテストだからエフェクトだけつくればいい」なんて思い込みは捨てて、色々と発想を広げてみてください。カメラも背景もキャラクターも、何だって作品を構成する要素になりますし、エフェクトの一部なんです。ゲーム開発の現場でも、エフェクトデザイナーがエフェクト以外に、様々な仕事を担当することがありますしね。自由に想像力を羽ばたかせてください。

後藤:これまで毎回テーマを設定してきましたが、今回は対象ツールが広がることもあり、あえてテーマを設定しませんでした。どのような作品をつくるか、本当に皆さん次第です。わずか数秒間に、すごいドラマや、つくり手の思いが込められたような作品が見たいですね。例えば『悪に染まったヒーロー』が繰り出すパンチからは、それまでの怨みや憎しみが込められた、キャラクターの人生まで感じさせるような、重たいエフェクトが発せられるはずです。もちろん、これは一例であって、囚われる必要はありません。こちらの想像をはるかに凌駕するような、素晴らしい作品を期待しています。





TEXT&PHOTO_小野憲史
EDIT_尾形美幸(CGWORLD)

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