2016.10.11 Tue

ゼロから特訓!ビジュアルデベロップメントNo.02>>Visual Development : Animation Film in USA

こんにちは。ビジュアルデベロップメントアーティスト(Visual Development Artist)の伊藤頼子です。私はサンフランシスコのAcademy of Art Universityでビジュアルデベロップメントのクラスを担当しつつ、映画やVRの映像制作に携わっています。この連載では、私の経験の中から、日本でアーティストを志す皆様のお役にたてるであろうことを選りすぐって紹介していきます。連載 第1回のレッスン1、レッスン2では、レイアウトとライティングの基本的なルールを解説しました。今回のレッスン3、レッスン4でも、引き続きライティング デザインの基本を学びます。前回もお伝えしましたが、目の前にある現実空間やモチーフを、そっくり3DCG空間に複製したからといって、良いビジュアルができるわけではありません。もっと見映えが良く、見やすいビジュアルにするためにはデザインのセンスが必要です。デザインのルールを学ぶことで、皆様のセンスとビジュアルがさらに強いものとなるよう願っています。

伊藤頼子氏(ビジュアルデベロップメントアーティスト)

三重県出身。短大の英文科を卒業後、サンフランシスコのAcademy of Art Universityに留学し、イラストレーションを専攻。卒業後は子供向け絵本のイラストレーション制作に携わる。ゲーム会社でのBackground Designer/Painterを経て、1997年からDreamWorks AnimationにてEnvironmental Design(環境デザイン)やBackground Paint(背景画)を担当。2002年以降はVisual Development Artistに転向し、『Madagascar』(2005)でAnnie Award(アニー賞)にノミネートされる。2013年以降はフリーランスとなり、映画やゲームをはじめ、様々な分野の映像制作に携わる。2013年からはAcademy of Art UniversityのVisual Development Departmentにて後進の育成にも従事。
www.yorikoito.com

直射日光と、曇天の光のちがい

現実空間の物体は、光が当たることで、そのフォーム(Form/形)を認識できるようになります。既にご存じの人もいると思いますが、球体に直射日光と曇天の光が当たった場合を例に、ライティングとフォームの原理を確認しましょう。

Point01:直射日光が当たった場合

▲球体に直射日光が当たった場合の見え方


直射日光に代表される強い光が当たった物体は、明るい領域と暗い領域がくっきりと分かれます。この現象は、次の3つの領域と、7つの要素に分解できます。(以降で紹介する要素1〜7は、上の画像内の1〜7と対応しています)

領域A 物体の明るい領域
要素1 ハイライト(最も明るい領域)
要素2 センターライト(ハイライト周辺の明るい領域)
要素3 ハーフトーン(領域Bとの境界。物体の固有色やテクスチャが最も明確に識別できる領域です)

領域B 物体の暗い領域(陰)
要素4 コアシャドウ/Core Shadow(明暗境界線とも呼びます。明るい領域と暗い領域の境目で、物体の最暗部にあたります)
要素5 反射光(床に当たって反射した光(反射光)に照らされた結果、要素4よりも明るくなっています)

領域C 床の暗い領域(影)
要素6 キャストシャドウ/Cast Shadow(投影とも呼びます。光に照らされた物体によって生じる、別の物体の上に落ちる影のことです)
要素7 オクルージョンシャドウ/Occlusion Shadow(本影とも呼びます。物体どうしの接触や近接によって光が遮られることで生じる濃い影のことです)

Point02:曇天の光が当たった場合

▲球体に曇天の光が当たった場合の見え方


曇天、つまり曇り空を介して届く日光は、拡散光(Diffused Light)とも呼ばれます。ここでもPoint01で紹介した3つの領域を確認できますが、その境界は曖昧で、はっきりとしたハイライトやコアシャドウ、明るい反射光などはありません。

このような曇天の光に照らされた物体を表現する場合には、それぞれの物体がもつ明暗の幅に注意しましょう。

▲第1回のレッスン2で描いたモチーフを、曇天の光が当たった状態で描いてみました。白い食器がもつ明暗の幅と、果物がもつ明暗の幅のちがいを観察し、的確に描き分けることが大切です。以降のレッスン3では、この作例にあるような明暗の幅のつけ方を学びます

画面内の明暗をコントロールし、画面をデザインする

以降のレッスン3でも、連載 第1回のレッスン2で描いたモチーフを使って解説していきます。レッスン2では、光と影を白・黒・灰色(3段階の明度)だけで表現しました。レッスン3では、デザイン性を保ちつつ写実的なボリューム(volume/量感)を加える方法を学びます。

Lesson03:デザイン性を保ちつつ、写実的なボリュームを加える

今回は、明暗の幅を以下の10段階に分けます。この中の1〜4を明るい領域、5〜8を暗い領域の表現に使います。置かれている場所の明度によって変わる場合もありますが「陰の部分よりも、影の部分は暗い」というルールに従って、物体が白一色であれば、物体の暗い領域よりも、床の暗い領域の方に濃いトーンを使います。

▲レッスン3では、1〜4を明るい領域、5〜8を暗い領域の表現に使います

レッスン2で黒く塗った領域を、5〜8の灰色へと置き換えてみましょう。今回は、床の暗い領域(キャストシャドウとオクルージョンシャドウ)に最も濃いトーンを使い、物体の暗い領域にはコアシャドウを入れます。さらに反射光も加えます。反射光には、床や地面だけでなく、周囲の壁、建物、空などから反射した光も含まれます。これについては、今後のカラーのレッスンで詳しく解説します。続いて、レッスン2で白と灰色に塗った領域を、1〜4の灰色へと置き換えていきます。

▲第1回のレッスン2で描いた課題。レッスン2では、光と影を白・黒・灰色(3段階の明度) だけで表現し、あえてグラデーションを入れませんでした


▲【左】床の暗い領域と、物体の暗い領域のトーンに差を付け、コアシャドウを追加/【右】さらに反射光やハイライトを加えると、写実的な画になっていきます


それぞれの領域内の明暗の幅を一定に保っておけば、画のデザイン性が損なわれることはありません。コントラストの高い画づくりをしたい場合は、明暗の幅を広くします。とはいえ、今回紹介しているのは基本のルールです。デザインやストーリーテリングの目的次第では、ルールから外れた画づくりをする場合もあります。

ここまでに紹介した原理やルールを理解した上で、画面内の明暗をコントロールし、画面をデザインできるようになることが大切です。自分が見せたい部分にはディテールを入れ、見せる必要のない部分は省略することで、画面内の見せ場(Focal Point)に観客の視線を集められるようになりましょう。すべてを細部まで写実的に描くのではなく、どこにディテールを入れ、どこを省略するべきか、見極める目を養ってください。自分ならではの個性を反映したビジュアルを描き、そのビジュアルでストーリーテリングをすることがとても大切だと思っています。

▲ここまでに紹介した原理やルールを応用することで、まったくちがうストーリーをもったビジュアルを表現できます

Lesson04:直射日光下の3種類のボックスを、1つの画面内に描く

レッスン3で学んだルールを応用して、直射日光下における、明暗の幅がちがう3種類のボックスを1つの画面内に描いてみましょう。以下の作例では、黒のボックス、灰色のボックス、白のボックスを描きました。

▲明暗の幅がちがう3種類のボックスを1つの画面内に描いてみましょう


作例内の白のボックスと、黒のボックスに注目してください。白のボックスの陰になっている暗い面と、黒のボックスの光が当たっている明るい面とでは、どちらがより明るく見えるでしょうか?白のボックスの暗い面の方が明るく見える、あるいはどちらも同じくらいの明るさに見える人もいるでしょう。しかし実際には、黒のボックスの明るい面の方が「より明るい」のです。実際の明暗は、作例下部のボックスと、作例上部の10段階の明暗を比較すればわかります。黒のボックスの明るい面は10段階の4番目、白のボックスの暗い面は10段階の5番目に該当します。

白のボックスの暗い面は、反射光を受け、実際よりも明るく見えたりします。さらに「白は明るく、黒は暗いもの」という先入観もあり、このような錯覚が起こるのです。画面をデザインする際には、こういった錯覚も考慮に入れる必要があります。

作例では、黒のボックス、灰色のボックス、白のボックスのすべてにおいて、明るい面は0〜4の範囲内、暗い面は5〜10の範囲内にまとめています。そのため、デザイン性を保ちつつ、すっきりと整理された印象の画になっているのです。ただしここで紹介していることも、あくまで基本のルールです。周囲からの反射光の数や当たり方、デザインやストーリーテリングの目的次第で、求められる画づくりは変わってきます。

今回紹介した様々なバリエーションの明暗表現は、ライティングデザインの基本となります。また、カラーを使って描く場合の基本でもあります。この続きは、次回以降の連載の中で説明いたします。


今回のレッスンは以上です。第3回も、ぜひお付き合いください。
(第3回の公開は、11月を予定しております)





TEXT&ART WORK_伊藤頼子
EDIT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田充

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