2016.08.12 Fri

『Max Man & Maya Man』キャラクターメイキング>>業界標準3Dソフトの特性をロボットで表現

オートデスクが開発・販売する業界標準3Dソフトの3ds MaxとMaya。長年世界各国の3D制作に活用されてきた両ソフトは、2016年2月からサブスクリプションモデルへ完全移行した。利用期間に対して対価を支払うこのビジネスモデルは、コンテンツ配信サービスなどでも導入が進んでいる。より気軽に利用できるようになった両ソフトの周知を目指し生み出されたMax Man、Maya Manのメイキングを、WOWの金原朋哉氏への取材を通して紹介しよう。

※本記事は、『CGWORLD Entry』vol.16(2016年7月発行号)掲載の「2D→3D キャラクターメイキング CASE:01 ムービー & 3Dデータ『Max Man & Maya Man』」を再編集したものです。

ムービー & 3Dデータ『Max Man & Maya Man』

3DCG制作者の増加をねらい企画された、ムービーと3Dデータの配信プロジェクト。特設サイトでは、3ds Max、Mayaの体験版に加え、キャラクターの3Dデータもダウンロード可能だ。
area.autodesk.jp/maxman_mayaman/

©2016 Autodesk, Inc ©2016 WOW inc.

金原朋哉氏(Visual Designer)

WOW inc.

専門学校で3Dを学んだ後、WOWに入社。エフェクトを得意とし、新しい技術に何でも手を出す同社の工場長。学生時代から3ds Maxを愛用している。
www.w0w.co.jp/

4K画質を想定した精密な3Dデータ

オートデスクからの打診を受け、WOW社内でプロジェクトが始動したのは2016年1月だったと金原氏はふり返る。「『若い層が3D制作に興味をもつきっかけになるようなムービーをつくってほしい』というのが依頼の主旨でした。ダイレクトにメッセージが伝わる表現を希望されていたので、当社が頻繁に手がけているアート系ではなく、3ds MaxとMayaをキャラクター化し、カッコ良く共闘させるというシンプルな見せ方を提案しました」。金原氏の企画が採用されたことで、同氏は約4ヶ月におよんだ本プロジェクトのリーダーに抜擢され、キャラクターデザイン、ムービーや3Dデータの制作・監修を担うことになった。




本作の特設サイトでは、4K画質のムービーに加え、Max Man、Maya Manの3Dデータも公開されている。「プロが仕事でつくる3Dデータに触れてほしいというのがオートデスクの希望だったので、ムービー制作に使ったリグ付きのモデルと同じものを公開しています」。4K画質を想定してつくられた3Dデータは非常に精密で、目立つ部分には8K解像度のテクスチャが割り当てられている。3D業界志望者にとっては有益な教材と言えるだろう。さらに3Dプリンタで出力可能なデータも別途公開されているので、ぜひチェックしてほしい。

ソフトの関係性から画をイメージ

Max Man、Maya Manをデザインするに当たり、金原氏は3ds MaxとMayaに対する印象を周囲のユーザーたちにヒアリングしたという。「ある程度共通性のある意見が聞けたので、まずは言葉で整理した後、設定やビジュアルに置き換えていきました」。

例えば3ds Maxの場合、『フリーランス間で使用率が高そう』『プラグインの追加でさらに力を発揮する』という意見が多かった。そこでMax Manは『個人戦が得意』という設定にし、多くのプラグインを搭載して戦うことを予感させる大容量のずんぐりとした胴体をデザインしたそうだ。一方でMayaは『ゲーム会社やCGプロダクションの大規模開発で多用』との意見を多く聞いたので、『集団戦が得意』という設定にし、Max Manとは対照的な細身のシルエットを探ったという。

「3ds MaxとMayaの関係性を踏まえ、Max ManとMaya Manは、切磋琢磨しつつ一緒に進化していく良きライバルで、共通の敵を相手に背中を合わせて戦う間柄だと設定しました」。当初から『お互いの頭をガツンとぶつけ合い、競争心をむき出しにする画』をイメージしていたので、その場面での見映えを意識して2体の頭部をデザインしたと金原氏は解説する。

「デザイン時に重視したのは、個性的なシルエットです。最近のものよりも、『鉄人28号』『ゲッターロボ』『聖戦士ダンバイン』など、昔の日本のロボットが参考になりました。そこに最近のハリウッド映画のようなディテールを詰め込むことで特徴を出しています」。金原氏は普段からPinterestという写真共有サイトを使ってアイデアの源泉となる画像を収集しており、今回もそこから発想を膨らませたという。

2D WORK:ロボットのデザイン

Point:シルエットの方向性を伝えるデザイン画

『ガンダム』シリーズが好きで、半年に1度は無性にガンプラをつくりたくなるという金原氏。本作ロボットの制作に際し、戸惑いはなかったという。「シルエットの方向性は3~4日で決まりました。ざっくりとしたシルエットを描いたデザイン画をstudio picapixelsの帆足タケヒコ氏にお送りし、まずは3DCGでのシルエット再現をお願いしました」。他の案件でも、まずはシルエットを検討し、それからディテールを追加していくことが多いという。

▲【左】Max Manのデザイン画/【中央】Maya Manのデザイン画/【右】Max Man、Maya Manと敵対するロボットのデザイン画。この段階から、Max Manと Maya Manの対照的なシルエット、髪を連想させる頭部のデザインなどが明確にイメージされていたことが読み取れる。なお、一連のデザイン画は白色の紙に黒色の鉛筆で描かれている。本記事では視認性を高めるため、画を2値化してスキャニングした後、白黒情報を反転して掲載している

3D WORK:ムービーと3Dプリンタへの展開

Point01:ムービーでの見映えを重視したモデリング

初期段階でオートデスクへチェックを依頼したものの、これといってリテイクはなく、自由につくらせてもらえたと金原氏は語る。「3ds Maxの担当者から『Maya Manがカッコ良すぎる!』という感想をいただいたくらいで(笑)、おおむね好評だったようです」。この時点でキャラクターを3Dプリンタで出力することも決まっていたが、まずはムービーでの見映えを重視したという。「どの程度のサイズ、ディテールまで出力可能なのか、大まかな制約は意識したものの、細かい調整は後日の宿題としました」。

▲【左】デザイン画を忠実に再現した初期段階のMax Man。「2Dの画をそのまま3Dにすると違和感があるので、こちらのイメージを伝えて修正していただきました」(金原氏)/【右】修正されたMax Manの画像に対して、さらにバランスを調整する指示がペイントオーバーで描き込まれている(画像の赤線で囲まれた部分)。前腕のボリュームを減らす一方で、下腿のボリュームは増やす指示が描かれている。この段階では、全身のシルエットを決定することが重視された


▲【左】シルエット決定後、ディテールを検討している段階の敵ロボット/【右】ディテールの修正内容を、【左】の画像にペイントオーバーすることで伝えている。「基本的な形は変更せず、ディテールを整理しつつ光の筋を加えてほしいと依頼しました」(金原氏)


▲【左】3ds Maxのクレイモードで表示されたMax Man(背面)/【右】同じくMaya Man。この表示モードを使うと個々のポリゴン面の方向や凹凸がわかりやすくなるため、金原氏はモデリング時に愛用しているという


▲ディテールが追加されたMax Man(左/約60万ポリゴン)とMaya Man(右/約50万ポリゴン)。『一匹狼』のイメージでつくられたMax Manには、アウトローを連想させるリーゼント風の頭部、バイクのマフラーを巻き付けたような首のパーツが付けられている。『統率された軍隊』のイメージでつくられたMaya Manは、洗練されたプロダクトを連想させる流線型のパーツで構成されている

Point02:破綻なくアニメーションさせるためのスキニング

約1ヶ月におよんだモデリングの完了後は、UVマップ展開、テクスチャ制作、マテリアル設定、リギングを金原氏が行なった。Max ManもMaya Manもパーツが多いため、UVマップ展開は特に時間を要したという。テクスチャの数はMax Manが26枚、Maya Manが18枚だ。最近のモバイルゲーム制作などではテクスチャを1~2枚程度に抑える方法が主流だが、本作は4K画質に対応するため、貼り付ける面積に応じて2~8Kの高解像度テクスチャを使い分けている。

無機物であるロボットのリギングでは、関節を曲げた場合の筋肉の盛り上がりを表現する必要はない。しかし、いくつかのパーツはスキニングで変形させていると金原氏は語る。「後で動かすことを想定してモデリングしていますが、メカとしての構造を厳密に追求しつつ、このシルエットを実現することは無理があります。そのため動いても破綻して見えないよう、胴体などにはスキニングを設定しています」。

ムービー制作に当たっては各カットの方向性を金原氏が示した後、社内スタッフ3名でアニメーション、レンダリング、コンポジットを分担した。普段携わっているCM案件の場合、かかる期間は長くて1ヶ月程度だが、今回のようにキャラクターが登場する案件では制作期間が長くなる傾向にあり、関わる人数も多くなるという。

▲3Dモデルにテクスチャを貼り付ける際には、3DペインティングツールのMARIが使われた。【左】はMax Man、【右】はMAYA Manを調整中の画面


▲【左】IllustratorでつくられたMax Man用のテクスチャ。体表の文字やマークが描かれている。なお、テクスチャは全てグレースケールで表現されており、色情報は3Dソフトで指定している/【右】3Dモデルのマテリアル設定はノードでつながっており、質感を一括変更できるようになっている


▲【左】Max Manのリグ/【右】3Dモデルデータも表示した状態のリグ。紫色で表示された胴体部分にはスキニングが設定されており、動きに応じて変形できるようになっている。「スキニング設定を施したパーツを表示したままアニメーションを付けると、処理速度が遅くなります。作業時は非表示にしておくと良いでしょう」(金原氏)。なお、ムービー制作時にはスキニングによってモデルが不自然に見えないよう、カメラワークや演出を工夫したという


▲【左】同じくMaya Manのリグ/【右】3Dモデルデータも表示した状態のリグ


▲【左】シーンデータ内に配置されたMax ManとMaya Man。3Dプリンタで多用される石膏素材から着想を得て、白く荒涼とした世界観の中で共闘する設定にしたという/【右】ムービー内のカット。Max Manの体表には、3Dプリンタで出力した際に現れる積層を連想させる質感が付けられている。なおムービーの尺は1分40秒で、金原氏による考察の基に決定されたという。「これ以上長くなると、飽きて見てもらえない可能性が高いだろうと考えました。今の視聴者に見てもらえる限界は、1分半前後だと思います」


▲金原氏が得意とする3ds Maxによるエフェクト表現と、Max Man(画面右)の共演

Point03:同じ3Dデータを使い、まったくちがう世界観を表現

本作の3Dデータは、多くの人に楽しんで使ってもらうことを期待して制作されている。金原氏自身、特設サイトで公開されている3Dデータを使い、WOWの20周年を記念する社内コンペ用ムービーを新たに制作したという。同じデータを使い、まったくちがう世界観をつくりあげる見事な手腕に感動する。しかもこれを4日でつくったというから驚きだ。3Dプリンタ用のデータは全身を一体出力できるよう調整されているため、両データのちがいを見比べるのも面白いだろう。

▲【左】特設サイトで公開されている3Dデータを使い、歌舞伎風の装束をまとったMax Manを制作/【右】髪と羽織には物理シミュレーションが適用されている。特設サイトで公開中のデータは、非商用であれば誰でも使用可能なので、ぜひダウンロードしてオリジナルのMax Man、Maya Manを生み出してほしい


▲【左】Max Manの頭部のパーツ。左はムービー用3Dデータ、右は3Dプリンタ用3Dデータだ。ムービーの場合は画面に映らない部分をつくる必要はないため、パーツ下部にはポリゴンが存在しない。しかし3Dプリンタで出力する場合には、穴のない密封状態にする必要がある/【右】Maya Manの膝部分の拡大。同じく、左はムービー用3Dデータ、右は3Dプリンタ用3Dデータだ。ムービー用をそのまま3Dプリンタで出力すると強度が不足するため、隙間を埋めることで補強している


▲【左】3Dプリンタで出力されたMaya Man/【右】3Dプリンタで出力されたMax Man
※3D Systems社製 石膏フルカラー3DプリンターProJet CJP 660にて出力

Point04:既存モデルの加工や、パーツ単位の造形から始める

3DCGの初心者が、いきなり本作のような3Dデータをモデリングするのは敷居が高い。まずは既存モデルの加工や、パーツ単位の造形に挑戦してはどうかと金原氏は提案する。「例えば3ds Maxのキャラクタースタジオとプラグインを組み合わせるだけでも、ロボット風のキャラクターをつくれます。1つずつできることを増やしていけば、徐々に自信が付き、カッコ良いロボットをつくれるようになるでしょう」。

▲【左】3ds Maxのキャラクタースタジオ/【右】【左】の形と質感を変更し、金原氏がつくったロボット風のキャラクター。金属の質感が設定されている


▲レイヤーを重ねて画をつくるようにモディファイヤを重ねることで、様々なモデリングが可能だと金原氏は解説する。「ここでは面の分割【左】・押し出し【右】を不規則に行うGreebleというプラグインを使っています。3ds Maxには色々なプラグインがあるので、試しに遊んでみると良いでしょう。こういったプラグインを組み合わせることで、複雑なディテールを短時間で表現できます」


▲前述の作例と同じく、Greebleを使って面の分割【左】・押し出し【右】を行っている





TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充

記事が気に入ったらシェアしよう!

New Post最新の記事はこちら

Ranking今週の人気記事

Findキーフレーズから探す

Top