2016.09.14 Wed

『誰ガ為のアルケミスト』キャラクターメイキング>>モバイル画面で映えるキャラクターバランスを追求

『誰ガ為のアルケミスト』には、物語の鍵となる『七つの罪』に翻弄される様々なキャラクターが登場する。彼らはユーザーの分身となり、30種類以上におよぶ多彩なジョブを選択し、広大な3Dマップでバトルを繰り広げる。そんなキャラクターたちを生み出す舞台裏を、本作のアートワークを統括するgumiのRINZO氏と、3DCGを手がけたgumiの池田佳正氏、グランディングの笹倉徳正氏に語ってもらった。

※本記事は、『CGWORLD Entry』vol.16(2016年7月発行号)掲載の「2D→3D キャラクターメイキング CASE:02 スマートフォンゲーム『誰ガ為のアルケミスト』」を再編集したものです。

スマートフォンゲーム『誰ガ為のアルケミスト』

2016年1月配信開始のタクティクスRPG。iOS/Android対応。ユーザーは高低差のある3Dマップで、戦略性の高いバトルを楽しめる。ガチャやシナリオカットに登場する美麗な2Dアートワークも魅力だ。
al.fg-games.co.jp/


©Fugi&gumi Games

RINZO氏(イラストレーター)

株式会社gumi

漫画家のアシスタント、建築パース制作などを経てgumiに入社。同社が配信する『ファントム オブ キル』『シノビナイトメア』でも2Dアートワークを担当している。

池田佳正氏(3Dチーフデザイナー)

株式会社gumi

家庭用ゲーム開発を経験した後、gumiに入社。『ファントム オブ キル』に続き、本作でも3D全般のディレクションを担当している。

gu3.co.jp/

笹倉徳正氏(3Dデザイナー)

グランディング株式会社

大学の教育学部で美術を学んだ後、家庭用ゲーム開発に携わった後、グランディングに入社。以前は映像演出を担っていたが、現在は主にモデリングを担当。

www.g-rounding.com/

絵にすることで、開発が先へと進む

本作には社内外合わせて10名以上のイラストレーターが参加しており、RINZO氏を含むその内の3~4名がメインのアートワークを担当している。「主人公のロギ、ライバルのディオスなどのメインキャラクターは、企画の詳細が決まる前に描き始めました」と全キャラクターのデザインを監修するRINZO氏は語る。「初期段階では、プロデューサーやプランナーが語るキーワードからイメージを膨らませ、ビジュアルを提案します。世界観や背景も含めたコンセプトアートを描く場合もありますね」。企画を絵にすることでスタッフの想像力が刺激され、開発が先へと進む場合も多いという。

▲【左】ロギとディオスの初期案/【右】同じく、カラーバリエーション


▲【左】ロギとディオスの決定稿


企画や仕様が定まり配信が開始された現在も、新規のキャラクターデザインやイラスト制作の依頼が絶えることはない。「同じ社内に開発チームがあるので、いつでも質問に行けるのが内製イラストレーターのメリットです」。社外のイラストレーターに依頼する場合には、詳細な設定書をつくることが多い。しかしRINZO氏が受ける依頼は、自由に想像できる余地が残されているという。「それほどガチガチに設定を固めていない場合も多く、自分のアイデアを盛り込めたりもします」。

イラストレーターが描いたアートワークは、週1回開催の会議でプロデューサーがチェックする。チェックバックはその場で出されることが多く、直ぐに修正する場合もあれば、翌週の会議に再提出する場合もある。全員が会議に出席するわけではないので、居合わせていない人にチェックバックを伝えることもRINZO氏たちメインスタッフの役割だ。「多い場合は3~4回のリテイクが出されます。1点当たりの制作期間は長いと1~2ヶ月、短いと1~2週間以内の場合もあります」。ユーザー動向に常時目を配り、臨機応変にアップデートを行うオンラインゲームの制作現場では、作業の優先順位が入れ替わることも少なくない。そのため、柔軟な対応が求められる場合もあるという。

可愛い顔だけでは魅力にならない

昔から格闘ゲームのファンだったRINZO氏は、マッチョなキャラクターのダイナミックなポージングを得意としている。一方で、可愛い女の子には苦戦することもあるという。「可愛い顔のキャラクターは世の中に溢れているので、それだけでは魅力になりません」。ポージング、仕草、ほかのキャラクターとの関係性など、様々な要素を組み合わせ、オリジナリティのある魅力を探っていくそうだ。「新しい要素を加えたいときは、バンバン画集や写真などの資料を見ます。煮詰まったら見る、煮詰まらなくても見る(笑)。自分の思い込みや癖だけで描かないよう意識しています」。

本作のキャラクターは、3D化も視野に入れてデザインする必要がある。しかしガチャに登場するイラストは、単体でユーザーの心を掴み、ワクワク感を演出しなければならない。「デザインの際には2Dでの見映えも強く意識しています。3D化に当たっては担当者が的確に情報を取捨選択し、見映えのするモデルに仕上げてくれるので、信頼してお任せしています」。

モーションの見映えまで考慮する

本作の開発には、福岡でゲームの企画・開発などの事業を展開するグランディングも協力している。「開発初期の約半年は、キャラクターのフォーマット制作に費やしました」と3Dモデルの制作・監修を担当する笹倉徳正氏は語る。gumiで3D全般のディレクションを担う池田佳正氏が本作に参加したのは、フォーマット制作の最終段階だった。「本作のキャラクター1体あたりのポリゴン数は4,500前後で、最も大きく表示されるユニット詳細画面でも、斜め上視点のフィールド画面でも同じデータを使います。両方の画面での見映えを念頭に、1番良いバランスを試行錯誤しました」。静止した状態はもちろん、ユーザーが操作した場合のモーションの見映えも考慮したと池田氏は語る。

業界全体の技術レベル、表現の流行も見ながら、フォーマット制作を通して頭身、眼の大きさ、ディテールの細かさといったデフォルメの方向性が決められた。「既存のモバイルゲームのキャラクターがどんなバランスでつくられているのか調べたり、実際に様々なバランスのモデルをつくったりしました。その中でも、gumiのプロデューサーが伝えてくださるイメージが最大の指針となりました」(笹倉氏)。

▲開発初期につくられた、キャラクターの試作フォーマット

あらゆる角度からデッサンをする

モデルフォーマットの決定後は、それを基にキャラクターが量産された。配信開始前の時点で、制作したキャラクターの総数は100体を超えていたと笹倉氏はふり返る。「gumiからデザイン画を頂戴したら、まずはラフモデルを制作し、チェックしていただきます。フォーマットのリグを流用できない特殊なキャラクターの場合は、優先順位を上げてモデリングし、チェックを通り次第専用のリグを制作します」。リグが完成したらラフモデルごとモーション担当者に渡し、仕上げのモデリングと並行してモーションが付けられる。どのセクションも短時間での作業を心がけているため、常に全体スケジュールを視野に入れ、臨機応変に作業の順番を組み替えると笹倉氏は語る。「1体あたりの平均制作期間は約10日。3回程度のチェックバックを経て完成にいたります」。

デザイン画のキャラクターは頭身が高いため、3D化に当たってはモデラーによるアレンジが必要となる。「2Dのデザイン画の限られた情報をどう解釈してデフォルメするかという点に、モデラーの個性や力量が出ると思います」(笹倉氏)。3Dモデルには、どの角度から見ても違和感がなく、しかもデザイン画の"キャラクター性"を損なわない造形が求められる。

▲【左】魔法使い(男女)のデザイン画/【右】デザイン画の"キャラクター性"を保ちつつ、デフォルメされた3Dモデル


▲【左】魔法使いモデルの修正前/【右】修正後。正面から見た場合には、帽子のツバを広くした方がデフォルメのバランスが良いように感じた。しかし斜め上視点のフィールド画面で確認すると、キャラクターの特徴を表す髪や身体の大部分が隠れてしまい、前後の区別もつきにくいことがわかった。そのため帽子のツバを縮小し、調度良いバランスにする修正が加えられた


「例えばデザイン画に蝶々結びのリボンが描かれていた場合、初心者のモデラーは平面的な造形をしがちです。でも、それでは横からだと1枚の板のように見えてしまい、リボンらしくありません」。実物のリボンを観察したり、どの角度から見てもリボンらしく見せるにはどうするべきかを考えることが大切だと笹倉氏は語る。「平面に描かれたモチーフを立体的に捉えるときには、学生時代のデッサンや彫刻の経験が活きています。あらゆる角度からデッサンをするような感覚で3Dモデルをくるくる回しながら、矛盾のない造形を探っています」。

2D WORK:世界観の指針となる2Dアートワーク

Point01:設定を膨らませ、新しいアイデアを提案

キャラクターの設定を膨らませ、新しいアイデアを提案することもあるとRINZO氏は語る。「このキャラクターの性格なら、こんな小物が好きだろう、こうすればもっと可愛くなる、というようにイメージを膨らませていきます。デザイン画の端に描いたキャラクターの仕草や口癖が採用されることもありますね」。

本作のキャラクターは、ガチャやシナリオカットの2Dアートワークに加え、OPアニメーションや3Dモデルにも展開される。そのためキャラクターのデザインに加え、服装などの立体的な形や構造の解説も求められるという。

▲【左】ミアンヌのデザイン画。動揺すると髪が猫耳のように立ち上がるというアイデアが描かれている。全ての提案が使われるわけではないものの、世界観や設定に沿ったものは歓迎されるという/【右】ロギのデザイン画。OPアニメーションにも登場するキャラクターなので、剣や鎧のディテール、厚みなどが詳細に描かれている。「3D化する際に聞かれるだろうと思うディテールや厚みも図解するようにしています」(RINZO氏)


▲デザイン画を元につくられたロギの3Dモデル


▲ユニット詳細画面に表示されたロギの3Dモデル。背後にはデザイン画のロギも表示されている

Point02:漫画の経験をシナリオカットに活かす

かつては専門学校でコミック制作を学び、漫画家のアシスタントも務めていたRINZO氏。漫画のネームからストーリーを読み解き、その場面に最適なレイアウトや演出を考え続けた経験が今の仕事に活きているという。

「考えに考え、半日以上かけて仕上げた絵に対して、漫画家の先生から3秒でボツを言い渡されたこともありました(苦笑)。でも1~2ヶ月たつと自分の"目線が上がる"ので、『ボツになって当然』と納得できるのです。プロの制作現場に入ってプレッシャーにさらされながら積んだ経験が、今の仕事をたぐり寄せたのだと思います」(RINZO氏)。

▲ゲーム中に挿入されるシナリオカット。【左】はラフ、【右】は完成画。漫画のようなコマ割りを取り入れており、右のコマでは場面の状況や緊張感、左のコマではディオスの憤怒を伝えている。ディオスは『七つの罪』の1つである憤怒を象徴するキャラクターだ


▲同じく、ゲーム中に挿入されるシナリオカット。【左】はラフ、【右】は完成画。ここではアガサの決意(画面左)とジークの断腸の思い(画面右)を伝えつつ、2人の位置関係や状況を広角のあおりカメラで印象的に見せている

Point03:フィールド画面で見映えのするシルエット

本作の3Dキャラクターの衣装と小物はジョブに応じて様々に変化する。そのため、頭部の特徴だけでキャラクターの見分けがつくこと、さらに衣装と小物の特徴だけでジョブの見分けがつくことが求められた。「フィールド画面には最大13体のキャラクターを配置できるのに加え、斜め上からの俯瞰(ふかん)カメラで映します。そのため離れた視点から見ても区別がつくように、わかりやすいシルエットを意識してデザインしました」(RINZO氏)。

▲【左】は魔法剣士、【右】は踊り子のジョブデザインだ。どちらも左側の【Before】はリテイク前、右側の【After】はリテイク後のデザインとなっており、シルエットに特徴をもたせることを重視した変更が加えられている。「踊り子のリテイクにあるように、身体のフォルムに沿った細身の衣装ではなく、左右に大きく広がったボリュームのあるデザインを心がけています」(RINZO氏)

3D WORK:ゲームの操作性に大きく影響する3Dモデル

Point01:フォーマットを3種に限定し、制作を効率化

本作では、『女』『男』『マッチョ』からなる3種のモデルフォーマットがつくられた。「基本となる体格とリグを3種に限定することで、制作全体の効率化を図りました」(池田氏)。フォーマットの制作段階から、アイレベルで大きく映るユニット詳細画面と、俯瞰で小さく映るフィールド画面における造形とモーションの見映えを確認し、最良のバランスを探ったという。

▲『女』のフォーマットを使ったアガサのデザイン画と3Dモデル


▲『男』のフォーマットを使ったディオスのデザイン画と3Dモデル


▲『マッチョ』のフォーマットを使った黒騎士の3Dモデル。各キャラクターのモデリングに際しては、フォーマットのバランスから大きく逸脱しないよう配慮しつつ、それぞれの個性を出すことが求められる

Point02:フィールド画面を踏まえバランス調整

本作のキャラクターたちはジョブが同じである場合、同じ衣装と小物を身に付ける。そのため頭部のデザインだけでキャラクターを判別できるようにする必要があった。「フィールド画面では顔が見えづらいので、髪の色やアクセサリーで判別できるよう工夫しています。帽子で髪が隠れすぎないようにしたり、キャラクターの前後方向がわかるようにすることも大切です」(笹倉氏)。

単体で見るとバランスが良くても、フィールド画面に複数のキャラクターを配置すると想像よりも殺風景に見える場合もあるので、実機での見え方を確認するよう心がけているという。

▲【左】奇術師のジョブを選択中のチハヤを正面から見た場合と、フィールド画面で見た場合/【右】同じくパティ


▲同じくラーフ。髪型と色のちがい、猫耳や髪飾りの有無によって、瞬時に見分けがつくよう工夫されている

Point03:デフォルメしても"キャラクター性"は維持

デザイン画のキャラクターをデフォルメする際には、その"キャラクター性"を維持するよう神経を使っているという。「特に顔の印象が大切です。ほんの少し目の幅や口の位置が変わるだけでガラッと印象が変わってしまうので、ドット単位でテクスチャを調整します。色も重要な要素なので、デザイン画の色をコピーしてテクスチャやシェーダに割り当てることもあります」(笹倉氏)。

▲【左】ヨミのデザイン画と3Dモデル(ジョブは忍者)。デザイン画の髪、目、衣装などの色をコピーし、3Dモデルのテクスチャやシェーダに割り当てている


▲【右】『ファントム オブ キル』のコラボイベントで入手できるティルフィングのデザイン画と3Dモデル。デフォルメしても、瞳の描き方、睫毛の本数などを同じにすることで、"キャラクター性"を維持している。限られたポリゴン数でリボンの立体感、浮遊感を出すための工夫にも注目してほしい

Point04:後工程も視野に入れ、必要とされるデータを制作

髪、アクセサリー、マントなどの"ゆれもの"は、フォーマットのリグに"ゆれもの"用ボーンを追加し、Unityの物理シミュレーションで制御している。「どういうリグを設定するかによって、モデルのつくり方を変える場合もあります。また、Unityのシェーダで色を変える場合は、テクスチャには色を付けずグレースケールで制作します。後工程も視野に入れ、どんなデータが必要とされているかを理解することも大切です」(笹倉氏)。

▲【左】弓使いのジョブを選択中のアルミラの3Dモデル/【中】アルミラのリグ/【右】3Dモデルとリグを一緒に表示している。物理シミュレーションを設定した際、髪、マント、身体などのモデルが干渉し合うことを防ぐため、お互いを離した状態でモデリングしている


▲髪モデルのテクスチャ仕様書。シェーダで色を変える領域はグレースケールで、リボンなどの色を変えたくない領域はカラーで描く仕様になっている





TEXT_CGWORLD編集部
制作協力_平林理奈(Playce)
PHOTO_弘田充

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