2016.08.12 Fri

CGのお仕事拝見!>>モデラーの仕事

モニタに表示された3DCG空間の中にキャラクター、建築物、自然物などのモデルをつくっていく作業をモデリング、担当する人をモデラー(あるいはモデリングアーティスト)と呼ぶ。本記事ではディレクションシーズへの取材を通して、モデラーの仕事を紹介する。

※本記事は、『CGWORLD Entry』vol.04(2013年6月発行号)掲載の「CGのお仕事拝見!PART1 モデラーの仕事」を再編集したものです。

國雲好隆氏(アートディレクター)

株式会社ディレクションシーズ

同社設立メンバーの1人。アートディレクションを担当する一方で、モデラーも兼務している。10年以上のモデラー経験を有する。

松本強太氏(デザイナー)

株式会社ディレクションシーズ

専門学校のゲームコースで2年間CG制作を学んだ後、新卒枠でモデラーとして入社した。主に背景モデリングを担当。

www.d-seeds.com

プロのモデリングでは、高い完成度が要求される

現在同社で主に背景モデリングを担当する松本強太氏は、専門学校時代から背景モデラーを志していたと語る。「まだまだキャラクターを3DCGでリアルに表現するのは難しい時代でした。その反面、背景なら比較的リアルな表現が可能で、しかも多種多様なモデル制作に挑戦できる幅の広さが面白いと感じ、強く惹かれましたね」。プロジェクトの進捗に応じて、キャラクターのモデリングやセットアップ、レンダリングなどを担う場合もあるが、一番楽しいのは背景モデリングだと笑顔で断言する。

今では自分の仕事に手応えを感じている松本氏だが、6年前の入社直後には苦い経験をしたとふり返る。「初仕事の内容は鮮明に覚えていますよ。どこにでもあるような赤い提灯をつくるのに、1週間もかかりました。今なら数時間でつくれるような簡単なモデルですが、当時はどうつくれば良いのか見当がつかず、無駄な作業も沢山やりました(苦笑)」。ポリゴンの頂点数が5個以上ある、ポリゴン数が足りない、逆に少ない、UVがちゃんと展開されていない、マテリアルの設定が不十分、テクスチャが汚い等々、ありとあらゆる失敗を重ねたそうだ。指示されたリテイクは5~6回に上り、期待に応えられない自分自身に嫌気がさしたと語る。「学生は行き当たりばったりでつくって、最終的な見た目が良ければ問題ないと思いがちです。けれどプロのモデリングでは、全ての要素において高い完成度が要求されます」。

松本氏の成長を見守ってきたアートディレクターの國雲好隆氏は、新人の多くが同様の道を通ると解説する。「私自身も新人の頃に似たような洗礼を受けました。それでも本当にモデリングが好きで、この仕事に入れ込める強い気持ちがあれば成長していけます」。想像力を膨らませ、自分のオリジナリティを反映させた入魂のモデルを世に送り出す緊張感と喜びを味わえる日まで、諦めずに挑戦を続けてほしいという。

モデリングのワークフロー

Step01:情報収集

実作業に入る前に、まずはアートディレクターなどに質問しながら依頼内容をしっかりと把握する。例えば映像内のカメラが固定されているなら、カメラに映る範囲だけをつくれば良い。もしカメラが広範囲を移動するのであれば、シーン全体をつくり込む必要がある。曖昧な理解のままつくってしまうと、作業が無駄になったり、後でリテイク対応に追われることになる。また、必要に応じて資料も集める。上は國雲氏自身が香港で撮影した資料写真だ。写真撮影は資料やテクスチャ用素材を得られるのに加え、構図やライティングの勉強にもなるので、モデリングのセンスを磨きたいなら積極的に取り組んでほしいと國雲氏は語る。

Step02:レイアウト

シーンの最終形を想像しながら、レイアウトを決定する。「取りあえず必要そうなモデルをバラバラにつくって配置してしまうと、1枚の絵として見た場合のクオリティが低くなりがちです。しかもカメラに映らない部分までつくってしまったり、何かと無駄が多くなります。3DCGであっても、2Dの絵を描く場合と同様、どんな絵づくりを目指すのか最初から意識する必要があります」(國雲氏)。加えて、この段階でライティングの最終形も想像しておくそうだ。「たとえば単調な画面になりそうな場合は、ライティングによって影を落とすことで変化をつけられます。ライトは大切な演出要素の1つです」(松本氏)。

Step03:モデリング

レイアウトが決定したら、個々のモデルをポリゴンでつくり込んでいく。背景モデルの場合は、極端なクロースアップで撮影されるなどの特別なケースを除けば、サブディビジョンサーフェスを適用することはないそうだ。モデリングと並行して、テクスチャ用のUVも展開していく。比較的シンプルな背景なら1週間、作業量の多い複雑な背景であれば4週間がかりになることもある。カメラの近くに樹や森を配置する場合などはポリゴン数が100万個近くになったりもするが、基本的になるべくポリゴン数をかけずにクオリティを上げるよう工夫していると松本氏は語る。

Step04:マテリアル&テクスチャ設定

モデリングが完了したら、マテリアルとテクスチャを設定していく。加えて、この段階でライトも設定する。「マテリアルやテクスチャの色はライティングに左右されて変化します。マテリアルとテクスチャの設定を完了してからライトをあてても、結局やり直しになってしまいます。だからマテリアル、テクスチャ、ライティングの工程は一方通行ではありません。行ったり来たりを繰り返し、徐々に完成度を上げていきます」(松本氏)。また、テクスチャを使ってシーンのクオリティを効果的に高めるため、ディスプレイスメントマッピングやノーマルマッピングも使用するそうだ。

Column:学生時代にデッサンをやってほしい

学生時代に学んでおいて良かったことは?という質問に対して、松本氏はデッサンと答えた。「対象の形を立体的に把握する力や、対象の部分だけでなく全体のバランスをみる力はデッサンを通して養うことができます。これらはモデリングでも必要な力です」と國雲氏は補足する。加えて、デッサン力はキャラクターのモデリングでも重視されるという。「筋肉の流れを読み取って、その流れをポリゴンで再現できる人は少ないです。見た目の形に合わせて機械的にポリゴンをつなげるだけでは綺麗な形状になりませんし、アニメーションを付けた時に破綻します」。上のように、指の間のポリゴン面の流れにまで神経を行き渡らせた造型をしてほしいという。





TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_大沼 洋平

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