2016.08.31 Wed

ポートフォリオ徹底解説No.02(コロプラ)>>気骨あふれる世界観と画力を評価

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No.01に続き、コロプラ新卒採用者のポートフォリオを取り上げる。今回紹介するのは2016年4月に新卒として入社したH.S氏。数多くの3DCG作品を掲載していた前回のW.K氏とは対照的に、アクリル絵具で描かれたアナログ作品が主体のポートフォリオだ。その制作から、採用にいたるまでの過程を紐解いていこう。

【左】H.S氏(デザイナー)
【右】緒方仁暁氏(執行役員/次世代部 部長)

株式会社コロプラ
colopl.co.jp/

全作品をパソコン管理し、短期間でポートフォリオを制作&改良

幼い頃からイラストや絵画を描くことが好きで、アクリル絵具は中学時代から愛用しているというH.S氏。美術予備校でデッサン力を磨き、多摩美術大学 グラフィックデザイン学科に進学した。自分の世界観を他者にも伝わるように表現するためには、グラフィックデザインを学んだ方が良いと考えての決断だったとふり返る。「製本のやり方、ページの組み方などを学ぶなかで、ポートフォリオは手製本でつくりたいと思うようになりました」(H.S氏)。一方で、大学にはキャラクターデザインや3DCGを学べる環境がほとんどなく、不安や迷いを抱えながら試行錯誤を続けたという。

就職を意識し始めたのは3年生の春で、仕事の中で自分の力を生かすなら、ゲーム業界で生かしたいと思ったそうだ。「昔からゲームが好きで、絵のインスピレーションの多くをゲームからもらってきました」(H.S氏)。しかし3年生の12月頃に制作した最初のポートフォリオでは、ゲーム業界への思いを表現しきれていなかった。「周囲の人に見せたら、『何をやりたいのかわからない』『何を見せたいのかわからない』と言われました」(H.S氏)。改良の必要性を感じたH.S氏は、つくり溜めた作品ストックを見返し、掲載作品や掲載順番を考え直した。まとめることが好きで、大学に入る以前から全作品をパソコンで管理し、ファイリングもしてきたというH.S氏。アナログ作品の場合は写真を撮ってデジタルデータ化し、紙出力にも対応できる解像度で保存していたため、ポートフォリオの制作にも改良にも時間はかからなかったという。

新卒採用の作品選考でH.S氏のポートフォリオを目にしたコロプラの緒方仁暁氏は、その世界観に圧倒されたとふり返る。「個性の強い世界観の作品を最初からドン!ドン!と見せてくれる構成で、インパクトがありました。後半の模写やデッサンで、基礎画力が高いこともわかったので、ぜひ会いたいと即決しました」(緒方氏)。メインの作品モチーフが連想させる気骨あふれる世界観と画力のおかげで、判断には1分もかからなかったという。最初の作品選考は『会いたいか否か』を判断することが目的なので、審査時間は概して短いと緒方氏は語る。ただし、その後は3回の面接を通して複数の面接官に回覧されるため、採用にいたるポートフォリオの合計閲覧時間は数時間に達するという。

Work01:骨をモチーフとする、個性の強い世界観

人間・牛・狼の頭蓋骨に、独自の世界観を組み合わせた作品群。骨の形状には幼稚園の頃から惹かれており、繰り返し描いてきたとH.S氏は語る。骨自体がインパクトの強いモチーフなのに加え、これらの作品群がカバー(表紙・裏表紙)や冒頭数ページに掲載されているため、ポートフォリオ全体の印象を決定づけている。「世界観をつくりたいという思いの強い人なのだと、ダイレクトに伝わってきました」(緒方氏)。

▲【左】A2サイズ(420×594mm)の紙にアクリル絵具で描画/【右】F10サイズ(455×530mm)の紙にアクリル絵具で描画。どちらも約70時間をかけた力作で、頭蓋骨と都市の夜景が同居する世界観が印象的だ


▲【左上段】アクリル絵具で描画された、狼の頭蓋骨をモチーフとする作品。ルネ・マグリットの作品を彷彿とさせる蒼天と、シュールな世界観が印象的だ/【右上段】【下段】前述の作品を3DCGで再現している。3DソフトはCINEMA 4DとMayaを使用。ほぼ独学のうえ、3DCGの勉強を始めたのは大学3年生からなので苦労したとH.S氏は語る。しかし自分の作品世界を立体空間として捉えることができ、良い刺激になったという

Work02:ゲームの仕事を連想させる世界観

古来から伝わる童話・神話・伝説や、最近のゲーム・アニメからインスピレーションを得た作品も多数掲載している。「ポートフォリオを改良するにあたり、ゲームの仕事を連想させる作品を増やすよう意識しました」(H.S氏)。一部の作品はPhotoshopで描かれているが、H.S氏が慣れ親しんできたアクリル絵具の塗り方を見事に踏襲しているため、ポートフォリオを一見しただけでは見分けがつかない。先に紹介した3DCGも、Photoshopによる2DCGも、アクリル絵具作品も、H.S氏にとっては自分の世界観を表現する手段という点では共通していることがよくわかる。

▲【左】アルファベット26文字から連想した世界を描いた26枚の連作の一部。アクリル絵具とPhotoshopを併用している。ハワード・パイルに代表される、児童文学の挿絵画家の作風を参考にしたという/【右】Photoshopのみを使い、25時間で描画されている。デジタルでの着色は絵具が乾くまでの時間を気にする必要がなく、やり直しや試行錯誤も容易だ。Photoshopを使うメリットのひとつは時間短縮にあるとH.S氏は語る

Work03:画力を伝える写真模写&デッサン

ポートフォリオの後半には、レンブラント・ファン・レインをはじめとする巨匠の作品模写、写真模写、デッサンが掲載されている。H.S氏の画力の高さは前述の作品群からでも伝わるが、後半の作品群を見たことで、その期待が確信に変わったと緒方氏は語る。「どの作品にも共通しますが、『絵の素人が見ても良いなと感じる作品』であることも重視しています。ゲームやVRコンテンツの開発はサービス業の一種です。多くの人が『カッコ良い!』『キレイだ!』と感じる画づくりができる感性が必要とされるので、専門外のスタッフにも作品を見せ、『上手いと思う?』と意見を聞く場合もあります」(緒方氏)。

▲マウリッツ・コルネリス・エッシャーの『Hand with Reflecting Sphere』(1935年)と題された自画像に刺激され、類似の写真を自室で撮影し【左】、それをアクリル絵具で模写している【右】。「正月中の課題として取り組んだものの、背景に本棚を入れてしまったことを後から後悔しました(苦笑)。徹底的に写真模写を突き詰められた思い出深い作品です」(H.S氏)


▲【左】木炭紙(500×650mm)に描かれた鉛筆デッサン。16時間を要しており、大学受験のためのトレーニングの一環として描いたものだ/【右】B3サイズ(364×515mm)の紙に透明水彩とコンテで描かれたデッサン。こちらは大学入学後に描いたもので、18時間を要している。モチーフはH.S氏自身の手で、『祈る手』と題されている。実在感に加え、ライティングの美しさにもこだわったという





TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_弘田充

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