2016.08.12 Fri

『デジモンストーリー サイバースルゥース』で学ぶタイポグラフィ

タイポグラフィとは、文字を使ったビジュアル表現のことだ。ゲームのロゴデザインやUIデザインでは、タイポグラフィの良し悪しが世界観や操作性に大きく影響する。本記事では、『デジモンストーリー サイバースルゥース』の主要スタッフへの取材を通して、ゲーム制作におけるタイポグラフィを紹介しよう。

※本記事は、『CGWORLD Entry』vol.11(2015年3月発行号)掲載の「UIデザインのお仕事 ゲームアートディレクション」を再編集したものです。

『デジモンストーリー サイバースルゥース』

digimonstory-cs.bngames.net

©本郷あきよし・東映アニメーション
©BANDAI NAMCO Games Inc.

・取材協力
羽生和正氏(バンダイナムコエンターテインメント/プロデューサー)
bandainamcoent.co.jp/
メディア・ビジョン
www.media-vision.co.jp/
佐藤正幸氏(マニアッカーズデザイン/グラフィックデザイナー)
mksd.jp/

ロゴや文字も、ゲームの世界観を表現する大切な要素

ロゴは"ゲームの顔"として扱われるため、それ単体で世界観やジャンルを伝えられれば理想的だ。同様に、ゲーム内で使われる文字も世界観を表現する大切な要素だ。様々なゲームグラフィックスの上に表示されるため、世界観に合わない文字を選択するとゲームの印象が悪くなってしまう。一方で、世界観にピッタリの文字を選べばゲームの雰囲気はさらに良いものになる。どんな文字を選択するかによって、ゲーム全体のクオリティが左右されると言っても過言ではない。

Point01:ロゴデザインは、ゲームのコンセプトに合わせる

『デジタルモンスター』シリーズは、小中学生向けのモンスター育成・バトルゲームとして開発されてきた歴史がある。そのため歴代のロゴは、若年層がワクワクするような『ガジェット』と、作品のテーマや世界観を表す『デジタル』をイメージした図案が多かった。色も若年層が受け入れやすい赤や黄色などの暖色系が多く、一貫してポップなデザインが採用されてきた。

しかし「大人になったデジモンファンのためのゲーム」をコンセプトとする『デジモンストーリー サイバースルゥース』のロゴでは、従来のポップ路線をベースにしつつも、極力ムダを省いたシンプルなデザイン、大人が違和感なく受け入れられる落ち着いたデザインが求められた。

▲【左】本作のロゴ/【右】検討段階でボツになったロゴ案。デザインに際し、「カタカナを主体としつつ、アルファベットも組み込むことで、クールでスタイリッシュなデザインにしてほしい」という依頼があったという。検討段階では、デジタルのドットをモチーフとするカクカクとしたロゴもデザインされた。しかし最終的には、直線だけを使ったデザインに落ち着いたそうだ。ロゴの場合にはシンボリックなデザインが求められるため、『ンス』『トー』『ルゥ』などの字間が最適なものになるよう、細かい調整がなされている。なお、前述の通りカタカナ部分は縦・横・斜めに伸びる直線のみで表現されているため、アルファベット部分に曲線を取り入れることで、全体の印象がシャープになり過ぎないよう配慮している。さらに本作のキャラクターを象徴する黄色の二重丸も中心付近に配置することで、ゲームとの関連性を強めている


▲【左】本作のUI/【右】システム項目のUI用にデザインされた文字。前述のロゴに適用されたデザインのルールが、UIの文字にも受け継がれている。カタカナとアルファベットは画数が少ないため、ルールから大きく外れることなくデザインできた。しかし漢字の中には画数が多いものもあり、『図鑑』のように個々のラインが細くなってしまうという問題があった(右図の左下参照)。そこで画数の多い漢字は大胆に省略し、できるだけラインの太さを確保するよう配慮している。デザインされた漢字を単体で見ると伝わりにくいため、隣の文字との関係性や字面で『図鑑』と読めるよう、試行錯誤を繰り返したそうだ(右図の右下参照)

Point02:基本フォントは、クセがなく世界観にマッチしたものを選択

文字はその形だけで感情や雰囲気を表現できる。RPGゲームの場合、プレイヤーが文字を目にする回数が非常に多いため、文字のデザインが世界観に大きく影響する。キャラクターのセリフ、状況説明のテキストなどに強い個性をもったフォントを選んでしまうと、ストーリーや演出が意図しない方向へと引っ張られてしまうこともある。プレイヤーの目に何度も触れるフォントは、クセがなく世界観にマッチしたものを選んだ方が良い。

フォントを選ぶ場合には、まず基本フォントとして1~2個を定め、続いて部分的に使うフォントを定める。例えば、ほかのテキストと区別させたい場合、文字の形によって何らかのイメージや感情を演出したい場合には後者のフォントを使う。加えて、ゲーム画面での表示領域や解像度、視認性(見やすさ)、可読性(読みやすさ)も考慮すべきポイントとなり。できるだけ少ないフォントで、最大限の効果が得られる組み合わせにすることも大切だ。

Point03:ゲーム画面にフォントを配置し、見映えを検討

ゲームのタイポグラフィでは『その世界で実際に使われているデザイン』という認識で文字を選び、世界観を構築していくことが大切だという。使用フォントの選定は、ゲーム画面の大まかなデザインや雰囲気ができた段階から開始される。ゲーム画面に様々な種類のフォントを配置して、見映えの検討を繰り返していく。本作の場合は会話ウインドウの表示回数が多いため、ますは会話ウインドウに表示するフォントを選定したそうだ。その後は部分的に使うフォントを選定、さらに前述のロゴと同じテイストの文字がシステム項目のUI用にデザインされ、世界観の演出と統一が行われた。

▲【左】会話ウインドウが表示されたゲーム画面/【右】テキスト部分の拡大。会話ウインドウには読むのに比較的時間のかかる長めのテキストが表示されるため、可読性が重視される。本作の基本フォントは『FOT-スキップ Std B』で、会話ウインドウのテキスト、パラメータなどで使われている。すっきりとした印象とポップな印象を合わせもつフォントで、スクエアタイプの字形が『大人のためのデジモン』というコンセプトにマッチしているという理由で選ばれた


▲【左】ゲーム画面/【右】メニューバーの拡大。『デジバンク』『パーティデジモン』『ファーム島1』などのメニューでは『FOT-ロダンNTLG Pro B』というゴシック体のフォントが使われている。前述の『FOT-スキップ Std B』と差別化しつつ、文字のもつ印象が乖離しすぎない組み合わせを意識したそうだ


▲【左】ゲーム画面/【右】文字部分の拡大。イベントシーンの一部では、『デジ文字』と名付けられたオリジナルフォントを使っている。このフォントは世界観に合わせて本作のデザイナーが制作したもので、開発時には外字登録して使用された





TEXT_CGWORLD編集部

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